女鳥羽川

女鳥羽川の概要

女鳥羽川（めとばがわ）は、長野県松本市を流れる一級河川で、松本市民にとって非常に身近な存在です。小さな川ではありますが、市街地の中心部を流れているため、その景観は松本の街並みに欠かせない要素となっています。

江戸時代初期には「女堂田（めとうだ）川」と呼ばれていました。この名称は、川の形状や周辺の地形に由来すると考えられています。

地理

女鳥羽川の源流は、松本市大字三才山にある三才山峠に位置しています。そこから市街地を流れ、田川に合流した後、奈良井川、梓川と合流し、最終的には犀川へと注ぎ込みます。

川の流れは、おおむね国道254号の旧道に沿っており、道路と並行する区間が多く見られます。また、川には鯉が放流されており、市民は水面を泳ぐ鯉の姿を眺め、その自然の恵みを享受しています。

水系

女鳥羽川は、信濃川（千曲川）水系の一部を構成しています。具体的には、以下の経路で水が流れています。

信濃川（千曲川） - 犀川（梓川） - 奈良井川 - 田川 - 女鳥羽川

歴史

流路の変遷

江戸時代以前、女鳥羽川は現在松本城がある場所の西側を、ほぼ直線的に北北東から南南西へと流れていました。しかし、16世紀後半にこの地を支配した武田氏が城下町を建設する際、松本城の外堀としての機能を持たせるため、川の流路を人工的に変更しました。

これにより、川は真南に流れ、その後急に西へとカーブするようになりました。この改修により、川幅が狭くなり、大雨の際には氾濫しやすくなったと言われています。

過去の災害

1959年（昭和34年）8月、台風7号が長野県を直撃し、松本市にも甚大な被害をもたらしました。女鳥羽川では、上流から流れてきた流木が橋脚に絡まり、さらにゴミなどが堆積して川の流れを堰き止めてしまいました。この結果、川は市街地で氾濫し、約4,000戸もの家屋が浸水するという深刻な被害が発生しました。

この災害を教訓に、女鳥羽川にかかる橋には橋脚が設置されなくなりました。また、市街地を流れるため川幅を広げることは困難であることから、川底を深く掘削することで、氾濫を防ぐ工事が実施されています。

水運

犀川通船

1832年（天保3年）には、筑摩郡白板村の折井儀右衛門が犀川での通船事業の許可を得ました。松本藩は、女鳥羽川と田川の合流地点に船会所を設けました。明治時代に入ると、折井氏の独占権は廃止され、複数の通船会社が設立されました。一時、通船の発着所は女鳥羽川の千歳橋付近に移されたこともありました。

しかし、1902年（明治35年）に篠ノ井線が開通したことで、松本からの通船は廃止されました。1968年（昭和43年）には、かつての女鳥羽川船着場の対岸に「犀川通船船着場跡碑」が建立され、水運の歴史を今に伝えています。

流域の自治体

女鳥羽川の流域は、長野県松本市のみです。

橋梁

女鳥羽川には、以下の橋が架かっています。

一の瀬橋
三才山橋
小日向橋（こびなたばし）
品庄沢橋
稲倉橋
ガラノ木橋
洞橋
伊深橋
山城橋
原橋
水汲橋（みずくま）
浅間橋
スポーツ橋
曙橋
元町橋
桜橋
源橋
清水橋
念来寺橋
鍛冶橋
大橋
一ツ橋
千歳橋（せんさいはし）
中央大手橋
女鳥羽橋
白板橋

女鳥羽川を題材とした作品

歌

女鳥羽川 - 大木綾子のデビュー曲

短歌

松本の町二（ふた）分（わ）くる女鳥羽川 清き流れの瀬の音絶たず - 窪田空穂

女鳥羽川は、その歴史と文化を背景に、多くの人々に親しまれてきました。この川は、松本の風景の一部として、これからもその清らかな流れを街にもたらすでしょう。

もう一度検索