梓川

梓川（あずさがわ）

梓川は、長野県松本市を流れる信濃川水系犀川の上流部を指す名称です。その源を飛騨山脈（北アルプス）の槍ヶ岳に発し、上高地を南へと流れていきます。

地理

梓川は、上高地では大正池を形成し、さらに下流では奈川渡ダムによって造られた梓湖へと注ぎます。島々で流れを東に変え、新淵橋を過ぎたあたりから、右岸に波田、左岸に梓という河岸段丘を形成しています。その後、松本市大字島内で奈良井川と合流し、この合流地点から下流は「犀川」と名を変えます。合流地点手前のラーラ松本付近では、奈良井川から取水された拾ヶ堰と勘左衛門堰が地下を横断しています。流域の森林は、奈良井川や高瀬川と共に中部山岳森林計画区に指定されています。

歴史

梓川の流域は古くから梓の木が豊富で、その木材は梓弓の材料として朝廷に献上されていました。このことが、川の名前の由来になったとも伝えられています。

利水

梓川の水は、古くから発電や農業用水として利用されてきました。そのため、新淵橋よりも下流の松本盆地では、流量が必ずしも豊富とは言えません。

発電

水路式発電所は、上高地に近い上流から、盆地部の昭和電工赤松発電所・梓水力発電所まで、流域の各地に建設され、古くから稼働してきました。1969年（昭和44年）11月には、奈川渡ダム、水殿ダム、稲核ダムの梓川三ダムが完成しました。これらは揚水発電所として運用されており、下流のダム湖の上端が、上流のダムの直下まで達するように造られています。

灌漑

松本盆地では、川を堰き止める構造物だけでなく、そこから水を取り入れて流す人工河川も「堰（せぎ）」と呼び、数多く存在します。梓川からの取水だけでなく、烏川から取水する烏川用水、犀川から取水する矢原堰、奈良井川から取水する拾ヶ堰・勘左衛門堰なども知られています。和田堰は、937年以前に完成したと言われるほど古い歴史を持ちます。寛政時代から計画され、明治初期に着工された波田堰は、計画時点で既に12の堰が存在しており、新設にはそれらの水利権を持つ12の堰の承認が必要でした。これが建設の大きな障壁となりました。波田堰百年史によると、12堰のうち、榑木堰、中萱堰、鳥羽堰、島堰、高松堰、北方堰、飯田堰の7つが名前を挙げられています。梓川三ダムの完成頃から、地下水路による灌漑も行われるようになり、畑作地域では灌漑用配水管が地下に細かく設置されています。

流域の自治体

梓川の流域には、以下の自治体が含まれます。

長野県：松本市、安曇野市

橋梁

梓川には多くの橋が架かっています。主なものとして、横尾大橋、河童橋、梓湖大橋、新淵橋などがあります。これらの橋は、地域の交通を支える重要な役割を果たしています。

支流・ダム・取水など

梓川には、横尾谷からの川、徳沢からの川、湯川、霞沢、前川、小大野川など、多くの支流が流れ込んでいます。また、奈川渡ダム、水殿ダム、稲核ダムなどのダムも存在します。これらのダムは、発電や灌漑に利用されています。取水施設としては、梓川頭首工などがあります。また、多くの堰も存在し、地域農業を支えています。

脚注

参考文献には、梓川に関する詳細な歴史や文化を記述した書籍が挙げられます。

あずさ書店編集部『幻の大寺院 若沢寺を読みとく』あずさ書店、2010年。
長野県文化財保護協会編集『乗鞍の歴史と民俗』信毎書籍出版センター、1981年。
横山篤美『波田堰百年史』波田堰事跡顕彰会、1975年。

関連項目

梓川に関連する項目としては、信濃川、犀川、上高地、大正池、河童橋、梓弓、[[梓橋駅]]、特急あずさ、梓川サービスエリアなどがあります。

外部リンク

国土交通省北陸地方整備局松本砂防事務所が提供する梓川流域の防災ライブ画像が利用可能です。

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