妊娠悪阻

妊娠悪阻についての詳細

妊娠悪阻（にんしんおそ）とは、妊娠期間中に発生する重度の吐き気や嘔吐を指し、これによって体重が減少したり、脱水症状を引き起こすことがあります。この症状はつわりと比較してもはるかに激しく、一日に何度も嘔吐を繰り返すことがあり、めまいを伴うこともあります。症状は妊娠20週頃から軽減することが多いですが、中には妊娠期間全体を通じて続く場合もあります。

妊娠悪阻の原因

妊娠悪阻の具体的な原因は明確には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。初めての妊娠や多胎妊娠、肥満、過去の妊娠で悪阻を経験したことがある場合、または家族に悪阻の経験がある場合などがリスク要因として挙げられます。妊娠性絨毛性疾患や摂食障害があった場合も影響を与える可能性があります。

妊娠悪阻の診断は、主に症状の観察に基づいて行われ、一日に3回以上の嘔吐が確認され、体重が5%または3kg以上減少し、尿からケトン体が検出されることで確定されます。ただし、これらの症状は尿路感染症や甲状腺の問題などの他の原因でも生じることがあるため、注意が必要です。

対処法と治療

妊娠悪阻の対処法には、水分補給と無刺激の食事が基本にあります。経口保水液や高タンパク質の食品が推奨されることが多く、重症の場合は点滴が必要になるケースもあります。医薬品としては、ピリドキシン（ビタミンB6）やメトクロプラミドがよく用いられますが、効果が不十分な場合はプロクロルペラジンやジメンヒドリナート、オンダンセトロンが使用されることがあります。最悪の場合には、入院治療も考慮されることがあります。

また、心理的なサポートや療法が症状の改善に寄与することもあり、リラクセーションやカウンセリングが効果を示すことがありますが、按摩に関する科学的裏付けは不十分です。

歴史的背景と影響

妊娠による嘔吐に関する記録は紀元前2000年にまで遡りますが、妊娠悪阻の医学的理解が進んだのは1852年、アントワーヌ・デュボワによる説明が最初です。妊娠悪阻は全妊婦の0.3から2.0%にみられるとされています。かつては妊娠中の重要な死因の一つでしたが、医療が進歩した現代では、適切な治療を受けることでそのリスクは大幅に減少しています。

妊娠悪阻を経験する女性は流産のリスクは低いものの、早産の可能性が高まることに注意が必要です。また、一部の患者は重度の症状により中絶を選択することもあります。

妊娠悪阻についての正しい知識を持ち、早期に医療的な支援を受けることが、症状の管理と妊娠の継続にとって重要です。

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