姫松停留場

大阪市阿倍野区帝塚山一丁目に位置する阪堺電気軌道上町線の停留場です。駅番号はHN06が付与されています。かつて熊野街道と南港通が交差する姫松交差点のすぐ傍にあり、閑静な住宅街として知られる帝塚山や、趣ある北畠といった地域の一角に位置しています。

歴史

姫松停留場は、1900年（明治33年）11月29日に開業しました。これは、阪堺電気軌道の前身である上町電気軌道が、東天下茶屋から上住吉（現在の神ノ木停留場付近）まで路線を延伸した際に新設されたものです。

近代の歴史においては、2018年（平成30年）に、この停留場を含む阪堺電気軌道の一連の施設が、土木学会選奨土木遺産に選ばれるという特筆すべき出来事がありました。選定対象となったのは、駅舎、電柱、そして停留場を構成するレール柱などであり、歴史的な価値が認められています。

駅名の由来

停留場名の「姫松」は、日本の古典文学である古今集に収められた、詠み人知らずの歌に由来するとされています。その歌は「我見ても久しくなりぬ住吉の岸の姫松いくよへぬらむ」と詠まれており、住吉大社の海岸沿いに生育していたとされる「岸の姫松」を指していると考えられています。

ただし、歌に詠まれたこの「岸の姫松」の具体的な所在地は、残念ながら現在では明らかになっていません。古くから開発の波にさらされ、その勢いが次第に衰えていった様子は、蜀山人が「住吉の新田増えてとしどしにあとずさりする岸の姫松」と詠み、また鯛屋貞柳も「我見ても久しくなりぬ住吉のあとずさりする岸の姫松」と詠んでいることからも窺い知ることができます。これらの歌は、名の由来となった姫松が、古くから人の営みの影響を受けていたことを示唆しています。

また、駅周辺の地名との関連も深いことが分かっています。かつて住吉町だった時代の字名として「姫松町」が存在していました。さらに、現在の晴明丘南小学校の北側辺りから、西成区の玉出小学校北側を経由し、十三間堀川に至るまでの一帯は、かつて「姫松通」と呼ばれていました。特に、この「姫松通」のうち西成区内の阪堺線より西方に広がる地域は、1926年（大正15年）に旧玉出町内で町名が改正されてから、1973年（昭和48年）に街路表示が変更されるまでの間、「姫松通（一丁目から五丁目）」という町名でした。この地域は、現在でいう玉出東2丁目、玉出中2丁目、および玉出西2丁目の大部分に相当します。

停留場構造

姫松停留場は、線路を挟んでホームが向かい合う相対式ホーム2面2線の構造を採用しています。上下線それぞれのホームは、姫松交差点の北側に位置しており、道路を挟んで斜めに配置されているのが特徴です。

設備としては、天王寺駅前方面行きの安全地帯すぐ横、交差点の角（具体的には阿倍野区帝塚山一丁目8番地1号の位置）に待合室が設置されています。ただし、この待合室はしばしば放置自転車によって利用しづらい状況にあるようです。

停留場周辺

停留場周辺は、閑静な住宅地の中に様々な施設や店舗が点在しています。主な施設としては、帝塚山病院、関西社会福祉専門学校、関西電力帝塚山変電所などが挙げられます。また、金融機関として三菱UFJ銀行北畠支店がありますが、この場所は1979年（昭和54年）に発生した三菱銀行人質事件の現場として歴史に刻まれています。

日常生活に必要な店舗としては、やまや帝塚山店やマツモトキヨシ帝塚山店があり、飲食店ではロイヤルホスト帝塚山店などがあります。

さらに、南港通沿いには、地元で評判の洋菓子店「ポアール」やチーズケーキ専門店「フォルマ」といった人気店があります。上町線沿いにも、ジャズライブハウス「ラグタイム」や和菓子店「福寿堂秀信」などが点在しており、個性豊かな商店が多いエリアです。この他にも、小規模ながら魅力的な飲食店が数多く見られます。

バス路線

最寄りのバス停留所は「姫松」となります。ここには大阪シティバスが運行する複数の路線が乗り入れています。

利用可能な主な系統は以下の通りです。

3号系統: 出戸バスターミナル行き、地下鉄住之江公園行き
25号系統: 住吉車庫前行き、地下鉄住之江公園行き

過去には、地域のコミュニティバスである赤バスも停車していましたが、住吉ループの東粉浜一丁目南行きや、近隣の阿倍野区社会福祉協議会停留所に停車していた阿倍野ループは、どちらも2013年 3月31日をもって運行を終了しています。

隣の停留場

阪堺電気軌道上町線における隣接する停留場は以下の通りです。

北畠停留場 (HN05) - 姫松停留場 (HN06) - 帝塚山三丁目停留場 (HN07)

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