姫路事件

姫路事件：暴力団抗争の激化と終結

姫路事件は、1980年1月10日から1981年3月6日にかけて、兵庫県姫路市を中心に発生した暴力団抗争事件です。関西二十日会に所属する木下会と、三代目山口組竹中組との間で繰り広げられました。この事件は、山口組組長・田岡一雄が関西二十日会との和平交渉を進めている最中に勃発し、その後の暴力団抗争に大きな影響を与えました。

事件の経緯

発端

1972年、三代目山口組竹中組の竹中正久組長は、元山陰柳川組津山支部長の杉本明政と小椋義政に盃を与え、自身の若衆としました。杉本は竹中組津山支部を名乗り、小椋は同支部の代貸となるとともに建設業を営んでいました。しかし、小椋が1977年から1979年まで道路交通法違反で服役している間に、彼の愛人が木下会平岡組の組員と親密になり、さらに竹中組津山支部の縄張りで金融業や麻雀荘を営業していたことが発覚。これに激怒した小椋は、平岡組に脅しをかけました。平岡組は謝罪しましたが、小椋は納得しませんでした。

木下会による小椋義政殺害

1980年1月10日夜、木下会平岡組の組員である片岡一良と池元幸男が小椋の事務所を襲撃し、小椋と山口組小西一家小島組組員の水杉義治を拳銃で射殺しました。翌11日には、竹中正久、細田組組長の細田利明、岡山竹中組組長の竹中武が杉本の自宅に集まり、対策を協議。13日に小椋の葬儀が津山市の経本寺で営まれると、直ちに竹中組は木下会会長・高山雅裕の愛人宅を銃撃しました。事態を重く見た高山は、兄弟分の白龍会組長・山田忠一に調停を依頼し、山田から湊芳治を通じて両者の仲裁が図られることになりました。

高山は湊、山田、そして大崎組組長・大崎英良と相談し、小椋の霊前に線香を上げることを竹中正久に伝えました。平岡組組長の平岡篤は自ら指を詰め、高山は湊、山田、大崎とともに竹中正久に会い、平岡の指と香典400万円を手渡しました。さらに高山は「小椋と水杉の殺害に関与した木下会組員を絶縁にする」と表明しましたが、湊が「絶縁まではしなくてもいいだろう」と発言したことで、事態は複雑化しました。竹中も高山も、この湊の提案をその場では了承しました。

竹中組による木下会への頂上作戦

湊の発言をめぐり、竹中は「絶縁まではしないが、破門にする」と解釈したのに対し、高山は「一切処分しなくてもいい」と解釈していました。木下会からの破門状が竹中組に届かなかったこともあり、3月25日、竹中正久は細田とともに田岡一雄の自宅を訪れ、木下会への報復を示唆しました。5月には、竹中組岡山支部長の松浦敏夫と岡山竹中組若頭補佐の藤田光一らが岡山駅構内で木下会幹部を待ち伏せましたが、遭遇できずに殺人予備罪で実刑判決を受けました。

小椋と水杉の殺害に関与した木下会組員が処分されていないことを知った竹中正久は、竹中組若頭補佐・平尾光をリーダーとする襲撃グループを結成。平尾らは木下会の幹部を狙いましたが、機会を得られず、5月6日に姫路に戻りました。そして5月13日、高山雅裕が二女の結婚式の礼の挨拶で知人宅を訪問後、木下会事務所に戻ろうとしたところを、平尾らの襲撃を受け、射殺されました。森崎右も死亡し、他の組員も重傷を負いました。

津山での拉致未遂と事態の決着

7月には、津山市で竹中組杉本組の組員が木下会島津組津山支部幹部の坂本貢を拉致しようとし、失敗。坂本は銃撃を受け重傷を負いました。三代目木下会を継承した大崎圭二は、岡山竹中組組長の竹中武に襲撃理由を問い質し、竹中武は組員から事情を聞き、大崎に伝えました。その後、竹中武は大崎に対し、個人名義で坂本を見舞う用意があることを表明しました。竹中武と大崎は会談し、湊の発言に対する解釈の違いに気づき、事態の収拾に向けて動き出しました。

1980年末までに、竹中組組員49人が逮捕されましたが、湊の舎弟である北田悦也が竹中組と木下会の仲裁に尽力し、1981年1月には竹中正久が木下会に香典を送ることを了承しました。そして同年3月6日、竹中正久と大崎は山口組湊組事務所で手打ち式を行い、抗争は終結しました。竹中正久は、高山雅裕と森崎右の香典として1000万円を大崎に贈りました。

田岡組長の態度

この抗争は、大阪戦争に端を発する関西二十日会との対立と仲裁の時期と重なっていました。田岡組長は一連の抗争について黙認していたとされています。高山組長殺害後には、竹中正久を自宅に招き、山口組から500万円を出すように指示したと伝えられています。

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