威海衛租借地

威海衛租借地：イギリス帝国の中国における租借地

威海衛租借地は、1898年から1930年まで山東半島に存在したイギリス帝国の租借地です。その面積は約750平方キロメートルに及び、現在の威海市中心部、威海湾、劉公島、そして海岸線から内陸部へと広がっていました。威海衛は、旅順口とともに北京への海からの重要な入り口を管理する役割を担っていました。

歴史的背景

威海衛の港は、1888年に清朝の北洋艦隊の基地として指定されました。1895年の日清戦争では、日本軍に占拠され、その後1898年にイギリスが租借権を引き継ぎました。

ロシア帝国が旅順港の租借権を得たことを受け、イギリスも清政府に圧力をかけ、威海衛を租借しました。これは、ロシアの台頭を抑止するための戦略的な動きでした。イギリスは日本を説得し、日本の占領軍と入れ替わる形で威海衛に入港しました。1898年7月に締結された条約では、イギリスの租借権は「ロシアが旅順港の占領を許可されている間は有効である」と明記されました。

イギリスは、威海衛を海軍中国艦隊の夏季停泊地や極東地域における艦艇の寄港地として利用しました。1904年の日露戦争では、日本はイギリスに対し、ロシア海軍が威海衛を避難所として利用することを恐れ、艦隊を戻すよう圧力をかけました。威海衛は、戦争特派員が通信所として利用し、旅順港への物資の密輸ルートにもなっていました。日本が日露戦争に勝利した後、イギリスは威海衛の租借権を1930年まで延長しました。

イギリスの統治

威海衛は、当初、戦争省の管轄下に置かれ、陸軍の弁務官が統治を行いました。しかし、調査の結果、主要な海軍基地や貿易港には適さないと判断され、1901年には行政が植民地省に移管されました。駐屯兵は、イギリス兵と中国人兵士で構成された威海衛連隊から成っていました。

香港総督は、香港の新界の恒久支配と引き換えに威海衛を中国へ返還することを提案しましたが、実現しませんでした。威海衛は、山東省がドイツの勢力圏内にあったため、香港のような発展は見られませんでした。

イギリス統治下では、住宅、病院、教会、茶館、運動場、郵便局、海軍墓地などが建設されました。

弁務官

威海衛弁務官は、租借地の統治における首長を務めました。当初は軍人が任命されていましたが、1902年からは民間人が任命されるようになりました。ジェームズ・スチュワート・ロックハートは、拠点をポート・エドワードに移し、租借地をリゾート地として開発しました。

弁務官は、立法や執行審議会に諮る必要がなく、多くの権限を与えられていました。また、イギリス国外にあるその領土を代表する責任も担っていました。最後の弁務官は、中国研究家のレジナルド・ジョンストンが務めました。

軍事と警察

威海衛連隊は、義和団の乱などに参加しましたが、1906年に解散しました。一部の兵士は、警察部隊として維持され、イギリス人警部補と中国人巡査で構成されていました。香港では、威海衛出身の男性が王立香港警察の巡査として雇用され、「D部隊」として知られていました。

司法

イギリスは1903年に高等法院を設置し、上海の裁判所から判事が選任されました。判事が不在の場合には、弁務官が司法権を行使することができました。威海衛法院からの上告は香港最高法院への上告が可能でした。

経済

威海衛では、自由貿易港としての整備が進められ、貨物取扱量や貿易総額が増加しました。多くの企業が進出し、落花生や石炭、綿糸などを取り扱っていました。しかし、貿易港としての地形的な制約や海軍の駐屯地としての役割から、青島などに比べると経済規模は小さかったです。

返還

1930年、威海衛は中国に返還されました。しかし、イギリスは特例制度の維持や外国人の土地所有など、いくつかの条件を付け、事実上の権益を残しました。返還後、威海衛は中国の特別行政区となり、イギリス人弁務官の役職は中国の長官に置き換えられました。劉公島はイギリス海軍に貸与されましたが、1940年に日本軍が上陸し、その実効支配は終了しました。

参考文献

欒玉璽「山東省の経済発展と沿岸都市の煙台・青島・威海 : 1860〜1937年を中心に」『経済学論究』62(4)、2009

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