嬉野茶

嬉野茶（うれしの茶）

嬉野茶は、佐賀県南西部の嬉野市から長崎県東彼杵町にかけての地域で生産される日本茶です。室町時代から続く長い歴史を持ち、その製法と品質の高さで知られています。

特徴

嬉野茶は、かつて釜炒り茶が主流でしたが、現在では蒸し製茶が一般的です。しかし、その製法には工夫が凝らされ、中国緑茶に似た丸い形状と緑色の艶が特徴の「玉緑茶（ぐり茶）」として知られています。香り、旨味が強く、数々の品評会で受賞歴を誇ります。

歴史

嬉野茶の起源は、永享12年（1440年）に肥前国平戸に渡来した明の陶工が、茶栽培に適した土地を求めて不動山皿屋谷に移住し、自家用の茶樹を栽培したことに始まると伝えられています。その後、茶葉の育成に適した環境と、明人・紅令民が持ち込んだ南京釜を使用した釜炒り技術によって、産地は拡大しました。

江戸時代初期には、吉村新兵衛が嬉野に移住し、茶樹栽培を始め、茶業の基礎を築きました。なだらかな山間地で霧深く、昼夜の温度差があり、日照量などの条件が茶の栽培に適していたことが、品質の高い茶葉を育む要因となりました。長崎の出島から輸出された嬉野茶は、欧米で評判を呼びました。長崎街道を通って嬉野宿に宿泊した司馬江漢や吉田松陰などの文人、ドイツ人医師ケンペルやシーボルトらによって、嬉野茶に関する記録が残されています。

幕末には、長崎の女性貿易商・大浦慶がオランダ人商人に嬉野茶のサンプルを提供し、その後イギリスの商人から巨額の注文を受けました。これは、日本の本格的な茶輸出の始まりとなりました。

明治・大正時代には宇治茶が主流でしたが、昭和初期には釜炒り茶である嬉野茶が、渋みの少ない中国茶を好むロシア人に輸出されるようになり、技術革新も進められました。第二次世界大戦後には機械製茶も導入され、嬉野は九州における一大産地となりました。

現在

嬉野茶の産地は、佐賀県の嬉野市を中心に、多良岳・国見山・脊振山系に点在しています。全国茶品評会では、蒸し製玉緑茶部門で「産地賞」と「農林水産大臣賞」を５年連続で受賞、釜炒り茶部門でも同様の賞を受賞するなど、高い品質を誇ります。

2002年には、「うれしの茶」は「佐賀、長崎県で生産された原料茶を100％使用して仕上げた統一銘柄」と規定され、地域ブランドとしての地位を確立しました。特許庁の地域団体商標にも登録されています。

しかし、かつて主流だった釜炒り玉緑茶は、生産性の高い「やぶきた」の栽培が増えたことで生産量が減少し、現在では総生産量の数パーセント程度となっています。その希少性から、保存会が設立されるほどです。

2018年には、嬉野茶に関する展示見学や茶摘み、茶染め体験などができる「うれしの茶交流館 チャオシル」が開設され、嬉野茶の魅力を発信する拠点となっています。

参考文献

嬉野市公式サイト「うれしの特産品あれこれ うれしの茶」
JAさが公式サイト「うれしの茶（嬉野茶）」

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