存在の証明

角松敏生『存在の証明』：生楽器が奏でる、新たな境地

2000年8月2日、角松敏生13枚目のオリジナルアルバム『存在の証明』がリリースされました。この作品は、それまでの角松敏生の活動において転換期となる重要な一枚と言えるでしょう。

それ以前の作品では、打ち込みサウンドを多用したアレンジが目立っていましたが、『存在の証明』では、生楽器の演奏が大きくフィーチャーされています。より有機的で、温かみのあるサウンドが、聴く者の心に深く響く仕上がりとなっています。

国際色豊かなレコーディング

アルバムのレコーディングは、東京、ロサンゼルス、ニューヨークの3都市にまたがって行われました。このグローバルな制作体制からも、角松敏生の音楽に対する高い志向が伺えます。

東京でのレコーディングには、当時角松のバックバンドメンバーに加え、ゴンチチのゴンザレス三上氏や、Cymbalsの矢野博康氏など、日本のトップミュージシャンが参加。一方、ロサンゼルスでは、ジェリー・ヘイ・ホーンズやジェイ・グレイドンといった、アメリカを代表するミュージシャンたちがその腕を振るいました。そして、ニューヨークでは、スティーヴ・ガッドやデイヴィッド・サンボーンといった、ジャズ界の巨匠たちがレコーディングに参加しています。

これら日米を代表する豪華なミュージシャン陣の共演により、『存在の証明』は、高度な演奏技術と洗練されたサウンドスケープを融合させた、他に類を見ない作品に仕上がっています。

ライブ定番曲とアルバムの魅力

『存在の証明』に収録されている楽曲の多くは、角松敏生のライブでも定番として演奏されています。「生足の駝鳥」と「愛と修羅」は、ライブでは連続して演奏されることが多く、そのパフォーマンスは多くのファンを魅了しています。「浜辺の歌」は、ライブ本編のラストを飾る楽曲として、オーディエンスとの一体感を高める演出となっています。間奏部分では、バッキングバンドメンバー紹介や、オーディエンスとのコール＆レスポンスなど、ライブならではの演出も見どころです。

アルバム収録曲には、他にも「煩悩 Rolling Stone」、「10月の愚者」、「Hope all goes well」、「Hold on to love 〜 Nothing I can do for love」、「痴漢電車」、「週末」、「Flow of Love」、「存在への不安と欲望の十二ヶ月」など、バラエティに富んだ楽曲が収録されています。「煩悩 Rolling Stone」の歌詞には、本来「殺したい」であった表現が「君を倒したい」と変更されている箇所があり、ライブでは元の歌詞で歌われている点が興味深い点です。

スタッフクレジットと制作陣

『存在の証明』の制作には、数多くのスタッフが関わっています。プロデューサーは角松敏生自身、ディレクションは國分哲男氏、アーティストマネージメントはBeansのうるしばらはじめ氏と鈴木博之氏、A&Rは柏木隆一氏などが担当しました。レコーディング、ミキシング、マスタリングには、国内外のベテランエンジニアが参加。その協力体制も、このアルバムの高いクオリティに大きく貢献しています。

まとめ

『存在の証明』は、角松敏生のキャリアにおいて重要な転換点となるアルバムです。生楽器を前面に押し出したサウンド、豪華なミュージシャン陣の参加、そしてライブでも高い人気を誇る楽曲の数々。これらの要素が組み合わさり、聴くものを魅了する名盤が誕生しました。角松敏生の音楽世界を深く知りたい方、そして高品質な音楽を聴きたい方にとって、必聴のアルバムと言えるでしょう。

もう一度検索