孝仁董皇后

董太后：後漢王朝を揺るがした霊帝の母

董太后（とうたいごう、生年不詳 - 189年）は、後漢の解瀆亭侯（かいとくていこう）劉萇（りゅうちょう）の妻であり、霊帝（れいてい）の生母として知られています。永楽宮（えいらくきゅう）に住んでいたことから、永楽太后（えいらくたいごう）とも呼ばれました。彼女の生涯は、後漢王朝の衰退と深く関わっており、その政治的影響力と謎に包まれた死は、歴史に様々な憶測を呼んでいます。

生涯

董太后は、劉萇に嫁ぎ、後の霊帝となる劉宏（りゅうこう）を産みました。劉萇の死後、劉宏が爵位を継承しましたが、建寧元年（168年）に大きな転機が訪れます。皇太后竇妙（とうみょう）によって劉宏が皇帝に擁立されると、董氏は生母として慎園貴人（しんえんきじん）とされました。翌年には孝仁皇后（こうじんこうごう）の尊号が授けられ、その地位は確固たるものとなりました。

熹平元年（172年）に皇太后竇妙が崩御すると、董太后は名実ともに皇太后となり、政治の中枢に関わるようになります。しかし、その朝政への干渉は、売官による私腹を肥やす行為として批判されました。一方で、王美人の忘れ形見であった孫の劉協（りゅうきょう）、後の献帝（けんてい）を養育するなど、複雑な側面も持ち合わせていました。

霊帝と何皇后（かこうごう）の間に生まれた嫡出子の劉弁（りゅうべん）を差し置いて、董太后は劉協の立太子を望むようになり、これが劉弁の母である何太后との深刻な対立を生むことになります。

中平6年（189年）、霊帝の崩御後、劉弁が即位すると、何皇后は摂政皇太后として政治の実権を握りました。これにより、董太后の甥である董重（とうちょう）と、何太后の兄である何進（かしん）を中心とした権力闘争が激化します。最終的に董重は失脚し、自殺に追い込まれました。同年6月、董太后は突然の死を迎え、その死には何太后による暗殺説が囁かれるなど、様々な憶測が飛び交いました。董太后は、劉萇と共に慎陵（しんりょう）に合葬されました。

彼女の孫である献帝の岳父董承（とうしょう）も、董太后の甥の一人と言われています。

董太后の生涯は、後漢王朝末期の混乱を象徴する出来事の一つであり、その政治的影響力と謎に包まれた死は、今もなお歴史家たちの間で議論の対象となっています。

参考文献

* 『後漢書』皇后紀下

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