孝昭帝

孝昭帝（こうしょうてい）

孝昭帝は、中国北朝時代の北斉の第3代皇帝で、姓諱は高演（こうえん）です。北斉を建国した文宣帝の弟にあたります。東魏の実力者であった高歓の六男として生まれ、母は婁昭君です。北魏孝武帝の皇后高氏、高澄、東魏孝静帝の皇后高氏、文宣帝、武成帝、博陵王高済とは同母兄弟です。

生涯

538年に常山郡公に封じられ、550年に兄である文宣帝が北斉を建国すると、常山王に封じられました。その後、并省尚書令、司空、録尚書事、大司馬と昇進を重ねました。文宣帝は遊宴にふけり、残虐な行為を繰り返しましたが、孝昭帝はたびたび文宣帝を諫めていました。文宣帝は、自分の死後に孝昭帝が帝位を簒奪することを予感しており、死の際には「お前が息子の高殷から帝位を簒奪することは仕方がない。だがその命までは奪わないでやってくれ」と言い残しています。

559年10月、文宣帝が崩御し高殷が即位しますが、孝昭帝は朝廷で勢力を拡大し、太傅、太師へと転じます。高殷は孝昭帝を排除しようとしますが、逆に孝昭帝は高湛と共謀し、高殷の側近を殺害。大丞相となり権力を握ると、太皇太后であった婁昭君の命を借りて高殷を廃位し、自ら皇帝に即位します。これが孝昭帝です。

孝昭帝は、皇帝になると前代までの弛緩した政治を立て直すために尽力し、人材を広く求めました。民衆に対しては税の軽減を図り、軍事面では庫莫奚への親征を行うなどの功績を残しました。しかし、561年9月に、占い師から高殷が居住する鄴に天子の気が見られるとの卜占を受けると、高殷を殺害します。この件については深く後悔したと伝えられています。

その1カ月後の10月、狩りの最中に落馬し重傷を負います。見舞いに来た母の婁昭君に高殷を殺害したことを責められ、自身の死期を悟ります。自身の息子である高百年が、自分が甥の高殷を害したように、弟の高湛により害されることを恐れ、高百年を廃して帝位を弟の高湛に譲り、息子の命だけは助けてほしいと遺言を残して亡くなります。しかし、高湛は後顧の憂いを無くすため、わずか9歳の高百年を殺害してしまいます。

日本の歴史学者である宮崎市定は、この一連の出来事を「自分は人の子を殺しておいて、自分の子だけ人に殺すなと頼んでも、それは無理な注文というものだ」と評しています。

宗室

后妃

元皇后
桑嬪
楊嬪
毛夫人

男子

楽陵王 高百年 - 次男で嫡長子とされるが、疑義が呈されている。
襄城王 高亮 - 庶長子。
汝南王 高彦理 - 三男。
始平王 高彦徳 - 四男。
城陽王 高彦基 - 五男。
定陽王 高彦康 - 六男。
汝陽王 高彦忠 - 七男。

女子

高善徳（建昌長公主）

子孫

孝昭帝には7人の男子と1人の女子がいましたが、孫は高白沢（高亮の子）と高氏（高彦理の娘）の2人しか確認されていません。

高白沢は、殺された高百年の跡を継いで楽陵王となりましたが、北斉滅亡後に蜀に流刑となり、そこで亡くなっています。高彦理の娘は北周の第4代皇帝宇文贇（宣帝）の側室となりましたが、子はいませんでした。高彦徳、高彦基、高彦康、高彦忠の4人には妻子や子孫に関する記録はありません。

伝記史料

『北斉書』巻六 補帝紀第六
『北史』巻七 斉本紀中第七

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