孝潔皇后

孝潔皇后（こうけつこうごう）

孝潔皇后は、明の嘉靖帝の最初の皇后であり、陳氏を姓とします。彼女の生涯は、宮廷内の権力闘争と皇帝の感情に翻弄された悲劇的なものでした。

生い立ちと入宮

孝潔皇后は、大名府元城県の出身で、生員の陳万言と冀氏の長女として生まれました。嘉靖元年（1522年）、彼女は張七姐（後の順妃）、文氏（後の恭妃）と共に、後宮に入るための選抜を受け、見事選ばれて入宮し、皇后に立てられました。この時、彼女の父である陳万言は泰和伯に封じられ、一族は栄誉に包まれました。

悲劇の始まり

嘉靖7年（1528年）春、孝潔皇后は妊娠しました。しかし、その後の出来事が彼女の運命を大きく変えることになります。ある日、順妃と恭妃が皇后に茶を献上した際、嘉靖帝が彼女らの手元を興味深く見たことに、皇后は嫉妬心を抱きました。彼女は激怒し、皇帝の前に茶碗を投げつけ、その場を立ち去りました。この行動に嘉靖帝も激怒し、皇后を地面に叩きつけ、妊娠中だった腹を激しく蹴り上げました。これにより、皇后は流産してしまいます。

流産後の悲劇

嘉靖帝は、流産した子を悼むとともに、皇后の行動にさらに激怒し、彼女の廃位を準備しました。流産後、皇后は体調を崩しましたが、治療を拒否し、嘉靖7年10月2日（1528年10月14日）に亡くなりました。嘉靖帝は、全ての責任を皇后の過失とし、彼女を天寿山（皇貴妃と皇太子の陵区）に葬り、「悼霊」と諡しました。

名誉回復と再評価

しかし、嘉靖15年（1536年）9月、皇長女の常安公主と皇次子の荘敬太子朱載壡（長子の哀沖太子朱載基が夭折した後に立太子）が、父である嘉靖帝の恨みを鎮めました。これにより、皇后の諡は「孝潔」と改められ、陳氏の一族も賞賜されました。しかし、嘉靖帝は、3人目の皇后である方氏（孝烈皇后）を葬る際、方氏への恩義から方氏を最初の皇后として扱い（格上）、孝潔皇后は後妻扱いとしました。

追贈と改葬

その後、隆慶帝が即位すると、孝潔皇后に「孝潔恭懿慈睿安荘相天翊聖粛皇后」の号が追贈され、永陵に改葬されました。

孝潔皇后の生涯は、宮廷内の複雑な人間関係と皇帝の気まぐれによって翻弄された、悲劇的な物語として後世に語り継がれています。彼女の最期は、当時の宮廷における権力関係と、女性の地位の低さを象徴していると言えるでしょう。

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