学令

学令：律令制における官人養成の仕組み

学令は、古代日本の律令法において、官僚の育成機関である大学寮と国学に関する規定を定めた重要な法令の一部です。養老令では、全22条から成り、令の第11番目に位置づけられています。学令は、教育機関の運営、教官と学生の身分、教育内容、試験制度など、官人養成に関する多岐にわたる事項を網羅しています。

教育機関と教官

学令は、大学寮と国学の組織、教官の資格や役割、学生の選抜方法などを詳細に規定しています。大学寮は、主に儒学を学ぶ機関であり、国学は、算術や書道を学ぶ機関でした。教官には、博士や助教といった資格が設けられ、それぞれの能力や経験に応じて役割が分担されていました。

教育内容とカリキュラム

学令で規定されている教育内容は、主に儒教経典の学習を中心としていました。養老令においては、『経』『周易』『尚書』といった儒教の主要な経典が教科書として採用され、それらに関する注釈書も授業で使用されていました。また、『礼記』や『左伝』といった経典も選択科目として用意されており、学生は自分の興味や適性に応じて学ぶことができました。授業は、教授正業に従って行われ、先読経文や分経教授といった方法を用いて、効率的な学習が目指されていました。

学生の身分と生活

学令は、学生の身分や生活についても規定しています。学生は、大学寮や国学に籍を置くことで、特別な身分を与えられ、一定の待遇が保障されていました。しかし、同時に、学令は学生の規律や倫理についても厳しく定めており、在学為序、不得作楽、行礼など、学生の行動規範に関する条文が複数存在します。これは、将来、国家を担う人材を育成するため、学生には高い道徳観と規律が求められたためと考えられます。また、病気や喪中などの事情で休学する際の規定（請暇、遭喪）や、退学処分（被解退）に関する規定なども設けられていました。

試験制度と官人採用

学令には、学生の学力や能力を評価するための試験制度に関する規定も含まれています。通二経は、官人採用試験の受験資格を得るための学習期間と条件を定めたものであり、一定期間、指定された科目を修了した学生だけが受験資格を得ることができました。また、講説不長は、一定の期間を満たさなくても、特別な能力を持つ学生が官人採用試験を受けることができる例外規定です。さらに、算経や書学生といった試験は、算術や書道などの専門的な能力を評価するための試験でした。

学令の変遷

学令は、時代とともにその内容を変化させてきました。大学寮・国学創設当初は、明経道（儒学）と算科（算術）が中心でしたが、後に紀伝道（歴史学）が主要科目として加わり、教育システム全体が変化していきました。この変遷は、時代の変化や社会のニーズを反映したものであり、律令制下の教育制度の柔軟性と発展を示しています。

参考文献

井上光貞・関晃・土田直鎮・青木和夫 校注『律令』（日本思想大系新装版、岩波書店、1994年）ISBN 978-4-00-003751-8

関連語句

大学寮、式部省

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