孫休

孫休（そん きゅう）：呉の知的なる皇帝、その生涯と治世

孫休は、三国時代の呉の第3代皇帝であり、初代皇帝である孫権の六男として生まれました。彼の生涯は、政治的な駆け引きと国難に翻弄されたものでした。ここでは、孫休の生涯、政治、そして彼に対する評価を詳細に解説します。

若き日々と即位への道

嘉禾4年（235年）に南陽出身の王夫人を母として生まれた孫休は、幼少の頃から学問に励み、中書郎の謝慈や郎中の盛沖から学びました。太元2年（252年）に琅邪王に封じられ虎林に住みましたが、後に丹陽郡、さらに会稽郡へと移住を余儀なくされます。会稽郡では太守の濮陽興と親交を深めました。

太元3年（258年）、孫休は転機を迎えます。孫綝によって弟の孫亮が廃位されると、孫休が皇帝として擁立されたのです。当初、孫休は警戒心を抱いていましたが、孫綝の使者の説得を受け入れ、都へと向かいました。即位後、孫休は孫綝を重用する一方で、その権勢を警戒し、密かに排除の機会をうかがっていました。

親政の確立と内政

孫休は即位後、孫綝一派を粛清し、親政を確立しました。彼は教育の振興に力を入れ、五経博士を設置し、官吏や部将の子弟に学問を学ばせました。また、文官を重視し、農耕を奨励する政策を打ち出しました。

しかし、その治世は決して平穏ではありませんでした。西陵での赤い烏の出現や、丹陽郡での干拓事業など、吉凶を占う出来事や民衆の不満を招く政策も存在しました。また、廃位された孫亮が再び帝位を狙っているという噂が立ち、孫休は孫亮を侯官侯に降格させましたが、孫亮は赴任途中に自殺。この事件は、孫休による毒殺説も囁かれるなど、後々まで尾を引きました。

永安4年（261年）には、光禄大夫の周奕と石偉を各地に派遣し、民情を視察させ、地方官の善政と悪政を調査させました。この結果に基づいて地方官の昇進・左遷を行ったとされています。

国難と崩御

孫休は学問を好みましたが、次第に政治から距離を置くようになり、側近の濮陽興や張布に政治を委ねるようになりました。このことが、国政の停滞を招いたとも言われています。

永安6年（263年）には、交阯郡で反乱が発生し、蜀漢が魏に滅ぼされるという国難に見舞われました。呉も蜀を救援するために動きましたが、蜀の降伏によってその動きは全て中止されました。

永安7年（264年）、孫休は崩御しました。彼の死後、万彧の進言により孫晧が皇帝に擁立され、呉は新たな時代を迎えることになります。

評価

陳寿は『三国志』において、孫休を「親しかった濮陽興・張布に政治を任せて、優れた才能を持つ者を抜擢して、新しい体制で自分の政治を行えなかった」と批判しています。また、孫亮を死に追いやったことを兄弟への愛情不足であると指摘しています。一方で、学問を好み、教育を重視した点は評価されるべきでしょう。

孫休は、知的な皇帝でありながらも、政治的な手腕や決断力に欠ける面がありました。彼の治世は、呉の衰退を招いた一因とも言えるかもしれません。

逸話

孫休は雉狩りを好んでいましたが、群臣から諫言されると、「つまらぬものでも節操は人に勝る」と答えたという逸話が残っています。また、病気が重くなった際に、病の正体を暴くために奇妙な実験を行ったという話も伝わっています。

宗室

妻：朱皇后（朱拠と異母姉の孫魯育の娘）

子：
孫𩅦（そん わん） - 太子、のちに豫章王
孫𩃙（そん こう） - 汝南王
孫壾（そん もう） - 梁王
孫𠅬（そん ほう） - 陳王

娘：公主 - 朱宣（朱拠の子の朱熊の子）に降嫁

孫休は、呉の歴史において重要な役割を果たした皇帝の一人です。彼の生涯を知ることは、三国時代の呉をより深く理解することに繋がるでしょう。

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