朱拠

朱拠（しゅ きょ）

朱拠（しゅ きょ、字は子範）は、中国三国時代の呉に仕えた武将・政治家です。呉の名臣・朱桓の一族で、孫権の娘である孫魯育を妻とし、朱熊、朱損、そして孫休の皇后である朱皇后の父にあたります。その生涯は、呉の政治における重要な出来事と深く関わっていました。

生涯

風采が良く、体力に優れ、議論にも長けていた朱拠は、黄武初年に五官郎中、侍御史に任命されました。当時、選曹尚書の曁艶が人事において大きな影響力を持っていましたが、朱拠は有能な人物であれば多少の欠点には目をつぶるべきだと主張しました。しかし、曁艶はこの意見を受け入れず、後に失脚し自害に追い込まれました。

孫権は軍の指揮官の不甲斐なさを嘆き、呂蒙や張温といったかつての名将を懐かしむ中で、朱拠の文武両面にわたる才能を認め、呂蒙の後を継ぐ人材として期待しました。建業校尉として湖熟に駐屯させられた朱拠は、黄龍元年（229年）に孫魯育と結婚し、左将軍に任命され、雲陽侯に封じられました。

質素な生活を好み、財産や恩賞を分け与えることを好んだ朱拠は、人物を見る目にも優れており、孟仁など多くの有能な人材を孫権に推薦しました。しかし、黄龍2年（230年）には、魏からの偽の投降者である隠蕃の正体を見抜けず、廷尉の郝普と共に彼を賞賛したため、一時的に孫権から遠ざけられました。

呂壱が権勢を振るっていた時代には、部下が大銭を横領した疑いをかけられ、朱拠自身も呂壱の讒言を信じた孫権によって無実の罪で数ヶ月も拘禁されましたが、後に無実が判明し赦免されました。呂壱は潘濬らの働きにより誅殺されました。

赤烏9年（246年）には驃騎将軍に昇進し、赤烏12年（249年）には丞相代行として祭祀を執り行いました。しかし、皇太子の孫登が早世した後、皇太子の孫和と魯王孫覇の間で後継者争いが起こり（二宮事件）、孫和が幽閉されたことを知ると、朱拠は諸将・吏を引き連れ、顔に泥を塗り、縄で自身の身体を縛ってまで抗議しました。しかし、孫権は聞き入れず、逆に怒って朱拠を百叩きの刑に処したうえ、新都郡の丞に左遷して中央から遠ざけました。

孫権が危篤である機会に乗じて、嘗て孫覇派の中書令であった孫弘は、詔書を捏造して追手を派遣し、朱拠に任地に赴く途中で自殺を命じ、朱拠は自殺しました。57歳でした。

子孫

子の朱熊・朱損は、孫亮の時代に兵を預かる身分となりましたが、朱損は孫峻の妹と結婚したため、孫峻や後継の孫綝の側近となりました。孫亮は孫綝と対立し、全公主（孫魯班）の讒言により、孫峻の悪行を阻止しなかったことを理由に兄弟は一緒に処刑されました。孫休の時代となった永安年間には、朱熊の子の朱宣が祖父の功労を認められ、雲陽侯とされ、公主を妻に与えられました。孫晧の時代に朱宣は驃騎将軍にまで出世しました。

娘の朱氏は、孫休の妃となり、後に皇后に立てられましたが、孫晧に疎まれ、甘露元年（265年）に逼殺されました。

評価

陳寿は、朱拠を「困難な時勢の中、正義を守るために身を滅ぼした。悲しいことである」と評しています。朱拠の生涯は、呉の政治における権力闘争と、それに翻弄された人々の姿を象徴していると言えるでしょう。

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