濮陽興

濮陽興（ぼくよう こう）

濮陽興(? - 264年)は、中国三国時代の呉に仕えた政治家。字は子元。兗州陳留郡出身。

生涯

父は戦乱を避けて北から呉に避難し、陸瑁の庇護を受けた。若い頃から才能を高く評価され、孫権に仕えて上虞県令、尚書左曹を歴任。五官中郎将として蜀漢への使者も務め、帰国後に会稽太守に任命された。

当時、琅邪王の孫休が丹陽から会稽に居を移しており、濮陽興は孫休と親交を深めた。257年、濮陽興はかつての会稽太守であった王朗が、虞翻と会稽の人物について問答したことを知り、役人たちの前でその内容を尋ねた。門下書生であった朱育がこれに答えたところ、その見事な返答を賞賛した。

孫休が皇帝に即位し、孫綝一族を粛清して実権を掌握すると、旧知の濮陽興を呼び寄せ、太常・衛将軍・外黄侯に任じ、軍事・国政全般を委ねた。

260年、都尉の厳密が丹陽で干拓事業を提案。多くの官僚がその実現を危ぶむ中、濮陽興は完成できると主張し、工事を強行した。しかし、莫大な費用がかかり、多くの兵士が命を落としたため、民衆の怨嗟を買った。

262年、濮陽興は丞相となり、軍事・行政を取り仕切った。この頃から孫休が学問に耽るようになり、濮陽興は寵臣である張布と結託して政治を壟断したため、人々の不満が高まった。

264年、孫休が崩御。孫休は息子への皇位継承を望んでいたが、万彧が孫晧を強く推薦。濮陽興と張布は朱太后に相談し、彼女の判断に委ねられた。その結果、濮陽興と張布は孫休の嫡子を廃し、孫晧を皇帝に擁立した。この功績により、濮陽興は侍郎を加えられ、青州牧に任じられた。

しかし、間もなく濮陽興と張布は孫晧を帝位に就けたことを後悔するようになり、万彧によって讒言されることとなった。同年11月、濮陽興は朝廷に参内した際、張布と共に捕らえられ、広州へ流刑に処された。しかし、刑地へ向かう途中で殺害され、一族もろとも処刑された。

小説『三国志演義』では、孫晧を諫めたために処刑されたとされている。

評価

歴史家の陳寿は、「濮陽興は丞相でありながら国家経営を疎かにし、張布の悪行に加担し、万彧の讒言を聞き入れたのだから、処刑されたのは当然である」と厳しく批判している。

参考文献

* 陳寿、裴松之注『正史 三国志』(井波律子・今鷹真・小南一郎 訳・解説、ちくま学芸文庫)

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