孫祥 (明)

孫祥（生年不詳 - 1449年）は、明朝時代の官僚であり、卓越した軍人でもありました。彼の出自は大同府大同県にあり、その生涯は激動の時代を背景に展開しました。

1445年（正統10年）、孫祥は進士試験に見事合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。その後、1448年（正統13年）には、その能力を認められ、兵科給事中という重要な役職に任じられました。そして、1449年（正統14年）には、右副都御史というさらに上位の役職に抜擢され、紫荊関の守備を任されることになりました。この紫荊関は、明朝の首都である北京を防衛する上で、戦略的に非常に重要な場所でした。

その年、オイラトのエセン・ハーンが率いる大軍が明朝に侵攻を開始しました。紫荊関もその攻撃目標の一つとなり、都指揮の韓青が戦死するという激戦が繰り広げられました。しかし、孫祥は部下を鼓舞し、4日間もの間、紫荊関を堅守し続けました。その間、敵の猛攻に耐え、防衛線を維持し続けました。ところが、エセン・ハーンは別働隊を使い間道から侵入し、挟み撃ちという奇策に出たため、紫荊関はついに陥落してしまいます。

紫荊関が陥落した後も、孫祥は諦めずに兵を率いて巷戦を展開しました。彼は最後まで勇猛果敢に戦いましたが、衆寡敵せず、部隊は壊滅し、ついに戦死してしまいました。しかし、この時、北京の朝廷には、孫祥が戦死したという事実は正しく伝わりませんでした。誤って孫祥が戦場から逃亡したという情報が伝えられ、朝廷内では彼に対する弾劾の声があがってしまいます。

その後、エセン・ハーンの軍が撤退したため、紫荊関の修復作業が行われることになりました。その修復作業中に、孫祥の遺体が戦場で発見されました。しかし、彼の遺体は焼かれて埋葬され、その事実は朝廷に報告されることはありませんでした。孫祥の死が正しく認識されないまま、彼の名誉は不当に傷つけられたままになっていました。

孫祥の弟である孫祺は、兄の冤罪を晴らすため、宮殿を訪れて訴え出ました。彼の訴えによって、孫祥の真実の姿が明らかとなり、ついに名誉は回復されました。孫祥の勇猛な戦いと悲劇的な最期は、多くの人々の心を打ち、歴史にその名を刻むことになったのです。

1465年（成化元年）、孫祥の息子である孫紳が、大理寺右評事という官職に任じられました。これは、父の偉大な功績が、子孫にまで及んだことを示すものであり、孫祥の遺志が受け継がれていることを表しています。

孫祥は、明朝の危機に際して、自らの命を顧みずに戦い抜いた英雄でした。彼の生涯は、官僚としての責任感と、軍人としての勇気と忠誠心を兼ね備えた人物であったことを示しています。孫祥の物語は、後世に語り継がれるべき、不屈の精神と名誉を重んじた人物の記録です。

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