孫鼎

孫鼎（そん てい）は、生年不詳ながら1457年に没した明代の官僚であり、儒学者としても名を残しています。字（あざな）は宜鉉（ぎげん）、号は貞孝（ていこう）と称しました。本貫は吉安府廬陵県です。

永楽年間、孫鼎は郷試に合格し、官僚としての道を歩み始めました。最初の役職は江浦教事であり、その後、松江府教授に任じられました。教育者としての彼の才能は、ここで開花し始めます。

1443年（正統8年）、孫鼎の才能はさらに高く評価されることとなります。楊溥の推薦により御史に抜擢され、南直隷の学政を監督する重責を担うことになったのです。彼は、学生たちの善行を記録する「本源録」を設置しました。これは、学生の行いを可視化し、善行を奨励するための革新的な取り組みでした。

また、孫鼎は学生の学力向上にも力を注ぎました。学生が面会に訪れると、彼は門を閉ざして試験を行い、その日のうちに甲乙を定めるという厳格な方法を採用しました。試験後には、すぐに結果が掲示されたため、不正な働きかけをする余地はなかったと伝えられています。この公平かつ迅速な対応は、彼の誠実な人柄を示すものであり、教育者としての彼の信念を物語っています。

1449年（正統14年）、土木の変により英宗がオイラトに連行されるという国難に見舞われると、孫鼎は試験を中止しました。彼は学生たちに対し、「今は簪花の宴を開く時ではなく、臣下が国難に立ち向かう時である」と述べ、学生たちを気遣い、茶会を開いて送別したと記録されています。この行動は、彼の忠義心と学生への深い愛情を示しています。さらに、彼は宮殿に赴き、決死の覚悟で国難に立ち向かうことを願い出ましたが、景泰帝からは返答を得られませんでした。その後、老齢の親を養うため、孫鼎は官職を辞することになります。

孫鼎の引退後も、彼の功績は忘れられることはありませんでした。吉安府知府の張瑄は、孫鼎を「孝行では曾子や閔子騫に匹敵し、学問では朱熹や二程を継ぐ者である」と称え、学士の職に就けるよう上奏しました。しかし、この願いは景泰帝によって却下されてしまいます。

1457年（天順元年）、孫鼎は自宅でその生涯を閉じました。彼の著書として『詩義集説』4巻が残されています。

孫鼎の生涯は、官僚として、そして教育者として、その誠実な姿勢と深い人間愛に満ちていました。彼の業績は、後世に長く語り継がれることでしょう。

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