宇宙の小石

宇宙の小石

アイザック・アシモフによるSF小説『宇宙の小石』（Pebble in the Sky）は、アシモフが手がけた最初の長編作品であり、「ファウンデーションシリーズ」へと繋がる重要な一作です。本作は、銀河帝国シリーズの一部として、広大なファウンデーション宇宙史を形作っています。

タイトルの「宇宙の小石」は、人類発祥の地でありながら、その事実が忘れ去られ、銀河の片隅で取るに足らない存在となってしまった地球を象徴する比喩です。

あらすじ

1949年のシカゴで隠居生活を送るジョゼフ・シュワーツは、ある日、核物理研究所の事故に巻き込まれ、次元の断層を越えて未来の地球へと飛ばされてしまいます。そこは、放射能に汚染され、人々が60歳で安楽死させられるという過酷な世界でした。

言葉も通じず、混乱するジョゼフは、知能増大装置『シナプシファイアー』の実験台にされます。その結果、彼は驚異的な知能と特殊能力を得て、未来の地球の言葉を理解できるようになります。彼は、人類が銀河に進出し、広大な銀河帝国を築いている一方で、地球が蔑まれている現状を知ります。

そんな中、ジョゼフは、強力な細菌兵器で銀河帝国を滅ぼそうと企む狂信的な集団「古代教団」と、その計画を知った考古学者ベル・アーヴァダンの対立に巻き込まれます。シナプシファイアーによって得た能力を駆使し、ジョゼフは古代教団の野望に立ち向かいます。

登場人物

ジョゼフ・シュワーツ: 20世紀の地球から来た元洋服屋のご隠居。豊富な知識と優れた記憶力を持つ。
ベル・アーヴァダン: シリウス出身の考古学者。人類発祥の地が地球であることを証明しようとしている。
アフレット・シェクト: 地球人の物理学者。シナプシファイアーの発明者で、銀河帝国への反感が少ない。
ポーラ・シェクト: アフレットの娘で、アーヴァダンに恋心を抱く。
エニアス: 銀河帝国の役人で、地球行政長官。反乱の危機に悩まされている。
ボルキス: 地球総理の秘書で、地球人の裏の支配者。
ナター: 古代教団の諜報員。アーヴァダンとシュワーツを銀河帝国のスパイだと疑う。
クローディー: 銀河帝国軍の中尉。地球駐留に不満を持ち、地球人を憎悪している。
アービン: シカ郊外に住む農夫。
ロア: アービンの妻。
グルー: ロアの父親で、車椅子を使用。

史実との類似

本作におけるトランター支配下の地球は、ローマ帝国支配下のユダヤ属州を彷彿とさせます。トランターに反乱を企てる狂信者は、ユダヤ戦争を引き起こした熱心党がモデルとなっています。アシモフは、狂信者を悪役として描くことで、この反乱に対する否定的な態度を示しています。

書誌情報

『宇宙の小石』 沼沢洽治 訳、創元SF文庫、1972年、ISBN 4-488-60405-6
『宇宙の小石』 高橋豊 訳、ハヤカワ文庫SF、1984年9月、ISBN 4-15-010577-4

関連項目

ファウンデーションシリーズ

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