宇沢＝浜田の命題

宇沢＝浜田の命題についての詳細

宇沢＝浜田の命題（英: The Uzawa-Hamada Proposition）は、特定の経済状況において、海外からの資本流入が国内の厚生に悪影響を与える可能性があるという理論を指します。日本経済においてこの概念は、1964年にOECDに加盟し、資本移動の自由化が求められる中で重要な意味を持つようになりました。この命題は、宇沢弘文と浜田宏一によって提唱され、後にリチャード・ブレッチャーとカルロス・ディアズアレサンドロの研究も考慮され、宇沢＝浜田＝ブレッチャー＝ディアズアレサンドロの命題（英: Uzawa-Hamada-Brecher-Diaz Alejandro Proposition）と呼ばれることもあります。

背景

日本は1960年代後半から1990年代にかけて、資本の国際移動が活発化する時期を迎えました。この流れは、自由貿易を推進するために資本取引の自由化を義務付ける「資本取引の自由化に関する規約」に基づくものでした。宇沢と浜田は、この資本の自由化に伴う経済的影響を分析し、関税による保護を受け続けている場合、海外から資本が流入しても国内の厚生が低下するリスクがあることを指摘しました。

理論の詳細

彼らの分析は、ヘクシャー＝オリーン・モデルに基づき、二つの最終財が二つの生産要素から生産される完全競争市場における小国の経済を想定して行われました。この命題の核心は、輸入関税による保護下にある産業に資本が流入する場合、国内の厚生が低下する可能性があるという点にあります。これは、ハリー・G・ジョンソンが提唱した窮乏化成長理論とも関連しており、関税保護下での生産性向上や資本蓄積が、逆に所得を減少させる可能性があることを示しています。

輸入割当と資本流入

さらに、論文の中では輸入関税に代わって輸入割当が存在する場合にも注目されています。輸入割当による保護を受ける産業がある場合、資本が流入すると、たとえその流入した資本の限界生産物価値が海外に支払われるとしても、国内の厚生が改善される可能性が示唆されています。ただし、分析では特殊要素モデルに依存しており、労働が二つの産業で使用される一方で、中間財産業には特有の資本が存在することが前提となっています。

中間財の視点

中間財産業が関税に保護されている状況で資本が流入した場合でも、国内の厚生が上昇する可能性についても議論されています。最終財産業でも同様の状況が観察され、それらの産業にとって有利な条件が整えば、資本流入が国内経済に好影響を与えることがあるのです。また、特殊要素モデルにおいて輸出産業に流入する資本は必ず厚生を改善することが示されています。

結論

宇沢＝浜田の命題は、資本の流入が必ずしも国内の厚生にとってプラスであるとは限らないことを示す重要な理論です。この命題は、プレビッシュ＝シンガー命題と関連して、資本流入によって生じる経済的結果を深く理解するための鍵となる理論的枠組みを提供します。資本の流入による影響は、豊富な資本を持つ国では異なる結果が見られることから、経済状況に応じて慎重に評価されるべきでしょう。

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