宇都宮錯乱

宇都宮錯乱について

宇都宮錯乱（うつのみやさくらん）は、1512年から1514年にかけて下野の宇都宮氏内で発生した深刻な内部紛争を指します。この事件は、宇都宮氏とその家臣たち間に根付いた権力争いや意見の対立が激化した結果として捉えられます。

宇都宮氏とその背景

宇都宮氏は、歴史的に足利将軍家と密接な関係を持っていましたが、享徳の乱の際にその立場が変化しました。古河公方が宇都宮城の近くに本拠を移したことで、宇都宮氏は新たな政治的プレッシャーに直面しました。このような背景の中、常に立場を変える行動を繰り返しました。さらに、宇都宮氏の庶流や中小武士たちは、宇都宮氏と関係を強化し、傘下に入ることで権益を守ろうとしましたが、これはかえって内部分裂を引き起こす要因となりました。

内部の対立

文明9年（1477年）に家督を継承した宇都宮成綱は、家族や家臣間の権力の均衡を取り戻すために努力しましたが、現実には芳賀景高が権力を握っていました。景高が1497年に亡くなった後は、その息子芳賀高勝が権力の中心となり、成綱は実質的に影響力を持つことができない状況に陥りました。

永正3年（1506年）には、古河公方の足利政氏とその息子高基の対立を巡って宇都宮氏内部も分裂しました。成綱は高基を支持しますが、高勝は政氏に従っており、この二つのグループは対立を深めていきました。

事件の発端

1512年4月、成綱は強大な権力を持つ芳賀高勝を殺害しました。この事件が宇都宮錯乱の引き金となり、芳賀氏は直ちに反乱を起こしました。この年、成綱は自らの息子忠綱に家督を譲っており、忠綱はまだ若かったため、成綱は彼を後見しつつ芳賀氏の反乱を鎮圧すべく軍を進めました。

ただし、芳賀氏の勢力は宇都宮氏に対抗できるほどの力を持っており、成綱は足利高基やその支持者である小田政治の援助を受けながら攻勢を強化しました。1524年には芳賀氏の反乱を鎮圧し、その後も周囲の反抗勢力に抵抗し続けました。

その後の混乱

芳賀氏の反乱を制圧した成綱は、芳賀家の首領たちを抑留し、宇都宮城を守りましたが、成綱自身は1516年に病死しました。統治を引き継いだ忠綱は、家中の統制を強化しようとしましたが、一部の家臣は忠綱に従わず、さらなる内紛に繋がりました。

特に、芳賀高経が結城政朝に保護を求めて動いてくると、忠綱はこれに抵抗しましたが、猿山合戦で敗北を喫し、抗争はさらに激化しました。忠綱の後、興綱が宇都宮氏の当主になるも、高経との対立は続き、ついには29年後に高経が興綱を排除しました。

その後の宇都宮氏内では、様々な権力闘争が続き、内紛は永正・大永・天文の時代を通じて続きました。これにより、宇都宮氏の衰退が加速していくこととなるのです。現在、宇都宮錯乱はその時代の権力構造や人間関係を読み解く重要な歴史的事件として認識されています。

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