安井曾太郎

安井曾太郎の生涯と作品

安井曾太郎（やすい そうたろう）は、1888年5月17日に京都市中京区で生まれました。彼の家族は木綿問屋を営んでおり、彼はその五男として生を受けました。幼少期より絵画に興味を持ち、1903年には商業学校を中退して絵の道を選びます。その後、聖護院洋画研究所に学び、著名な画家たちに師事することで早くから才能を開花させました。

1907年、彼は先輩画家津田青楓の渡欧をきっかけに同じく渡欧することを決意します。このとき、彼は過去の作品を全て焼き捨てて新たなスタートを切りました。フランスではアカデミー・ジュリアンで学び、特にポール・セザンヌやイタリア・ルネッサンスの彫刻、エル・グレコの芸術から多大な影響を受けました。彼は約7年にわたりフランスに滞在し、その間にイギリス、イタリア、スペインなどを巡ります。

第一次世界大戦の勃発と自身の健康問題により、安井は1914年に日本へ帰国し、1915年には第2回二科展に滞欧作を出品し、二科会の会員に推挙されます。しかし、この後の約10年間は彼にとっての低迷期であり、健康の回復とフランスと日本の文化的な違いに苦しみながらも、自身のスタイルを模索しました。

1930年に発表した『婦人像』を契機に、安井は独自の日本的油彩画の様式を確立していきます。彼は梅原龍三郎と共に昭和期を代表する洋画家の一人として位置づけられ、二科会の技術指導にも取り組みました。また、この時期に石原求龍堂から木版画を発表し、版画分野でも活躍を見せました。さらに1936年には、石井柏亭や有島生馬などと共に一水会を結成し、同会の委員として活動を続けました。

1944年には東京美術学校の教授に就任し、戦後も多くの学生を指導しました。1946年には埼玉県に蕨画塾を開校し、戦後の混乱期においても若手画家の育成に努めました。彼は文藝春秋の表紙画も手掛け、多な活動を展開しました。

安井は1952年に文化勲章を受章し、その名声は高まりましたが、1955年12月14日に肺炎の療養中に心臓麻痺により67歳でこの世を去ります。彼の作品は、今でも多くの美術館に所蔵されており、日本の洋画史において重要な位置を占めています。

主な作品

• - 孔雀と女 (1915年) - 京都国立近代美術館所蔵
• - 黒き髪の女 (1924年) - BBプラザ美術館所蔵
• - 婦人像 (1930年) - 京都国立近代美術館所蔵
• - 外房風景 (1931年) - 大原美術館所蔵
• - 金蓉 (1934年) - 東京国立近代美術館所蔵
• - T先生の像 (1934年) - 東北大学史料館所蔵
• - 深井英五氏像 (1937年) - 東京国立博物館所蔵
• - 承徳喇嘛廟 (1938年) - 愛知県美術館所蔵
• - 孫 (1950年) - 大原美術館所蔵

木版画

• - 椅子に凭れる女 (1932年) - 郡山市立美術館
• - 果物 (1932年) - 郡山市立美術館
• - 外房風景 (1932年) - 郡山市立美術館
• - 魚とさざえ (1934年) - 郡山市立美術館

安井曾太郎の作品は、その独自の美的感覚と日本的要素の融合により、多くの人々に愛され続けています。彼の生涯にわたる絵画の旅は、日本洋画の発展に大きく寄与したと言えるでしょう。

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