安井郁

安井郁の生涯と業績

安井郁（やすい かおる）は、1907年4月25日に大阪府門真市で生まれ、1980年3月2日に逝去した日本の国際法学者および平和運動家である。彼は法政大学の名誉教授であり、国際法学会の幹事長、さらには原水爆禁止日本協議会（通称原水協）の初代議長を務めた。彼の業績や活動は日本の平和運動に多大な影響を与えた。

幼少期と教育

安井は大阪市立生魂小学校に通っていた際、著名な作曲家である服部良一と同級生だった。彼は国際法を専門とし、学生時代にはモーゲンソーの思想に触れていた。東京帝国大学法学部を卒業後、教授として戦前の国際法学を指導し、「大東亜国際法」を提唱したが、これが占領軍により戦争協力とみなされ、1948年には公職追放となった。

平和運動への取り組み

安井は戦後、神奈川大学を経て法政大学教授に就任し、平和運動に熱心に取り組んだ。1954年、ビキニ水爆実験によって引き起こされた第五福竜丸の被爆事件を受け、地域の婦人団体と連携し「原水爆禁止署名運動杉並協議会」を発足させる。彼はこの協議会の議長として「杉並アピール」という声明を発表し、運動を推進した。

その後、原水爆禁止署名運動は全国的に広がり、同年8月には全国組織である原水爆禁止署名運動全国協議会が結成され、安井は事務局長に就任した。彼の熱意によって、平和を願う運動が日本全国に広がったのである。

1955年には広島で第1回原水爆禁止世界大会を開催し、続く9月には原水協が結成され、安井が初代理事長に就任した。しかし、政党間の対立が激化し、1963年には社会党系のメンバーが脱退した際、彼は役員を辞任し、平和運動の表舞台から退くこととなった。それでも彼は朝日新聞に投稿を続け、運動の統一を訴え続けた。

晩年と思想

1970年代には朝鮮民主主義人民共和国のチュチェ思想に関心を寄せ、日朝社会科学者連帯委員会の議長に就任。彼は晩年には金日成主義を「独創的思想」と称賛するなど、研究活動を続けた。また、チュチェ思想国際研究所の初代理事長も務めた。

家族と社会活動

安井の妻、安井田鶴子も彼の活動を支援し、東京都杉並区で女性たちの読書会「杉の子会」を運営した。彼女は反核署名運動や「草の根平和の集い」といった活動にも参加し、平和と人道主義の活動を続けた。二人の娘はロシア文学者の安井侑子である。

主な業績

安井は多くの著作を残しており、以下のような著書がある：

• - 『国際法学講義要綱 第1』（1939年）
• - 『民衆と平和 未来を創るもの』（1955年）
• - 『国際法学と弁証法』（1970年）
• - 『朝鮮革命と人間解放 チュチェ思想の具現』（1980年）

彼の活動や思想は、今日の平和運動や国際法の研究においてもなお影響を与えている。そして彼の生涯は、平和を求める人々にとっての指針として語り継がれている。

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