安全地帯 (交通)

安全地帯：路面電車と歩行者の安全を守る空間

安全地帯とは、路面電車の乗降客や道路を横断する歩行者の安全を守るために設けられた道路上の区域です。路面電車の停留所（電停）では、乗降のためのプラットフォームとして機能する一方、広い道路では、歩行者が安全に道路を横断できるよう、車道上に設けられた島状の施設を指す場合もあります。この島状の安全地帯は、安全島またはrefuge islandとも呼ばれています。

日本の安全地帯：法規制と設置状況

日本の道路交通法では、安全地帯を「路面電車に乗降する者若しくは横断している歩行者の安全を図るため道路に設けられた島状の施設又は道路標識及び道路標示により安全地帯であることが示されている道路の部分」と定義しています。

多くの路面電車では、軌道を道路の中央寄りに敷設しているため、電停にはプラットフォームが設置されるのが一般的です。このプラットフォーム自体が安全地帯に該当します。しかし、道路幅員が狭かったり、交差点付近など、プラットフォームの設置が困難な場合もあります。そのような電停では、道路標示（白線と黄色い太線で囲まれた区域）によって安全地帯が示され、乗降客はそこで路面電車に乗り降りします。安全地帯には、青地に白のV字の道路標識も設置されるのが一般的です。

安全地帯に係る交通ルールと法的責任

車両は安全地帯への進入が禁止されています。電停で路面電車が停車中の場合、安全地帯の有無によって車両の通行ルールが異なります。安全地帯がない場合、乗降客の乗降が完全に終了し、横断しようとする者がいなくなるまで、車両は路面電車の後方で停止しなければなりません。ただし、乗降客が乗降を終え、路面電車の乗降部から1.5メートル以上の間隔を空けて通行できる場合は、路面電車の左側を徐行して通過できます。安全地帯がある場合は、徐行して通過可能です。路面電車の有無に関わらず、安全地帯に歩行者がいる場合は、必ず徐行しなければなりません。また、安全地帯の左側とその前後10メートルは駐停車禁止となっています。

安全地帯に故意に車両を進入させ、交通事故を引き起こして人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪（通行禁止道路運転）に問われ、最長20年以下の懲役（加重により最長30年以下）と運転免許の取消・欠格期間が科せられます。故意性が極めて強い場合は、殺人罪で起訴されることもあります。

安全地帯がない場合の事例

安全地帯が設置されていない電停も存在します。例えば、広島電鉄小網町停留場では、道路幅員の狭さから安全地帯となるプラットフォームが設置できず、道路上に白線で乗り場を示しています。このように安全地帯がない区間では、自動車と路面電車の最高速度が規制されることもあります。岐阜市内を走っていた名鉄岐阜市内線・美濃町線も、多くの電停に安全地帯がなく、速度規制は従来通りだったという歴史があります。

香港の安全地帯

香港では、幅員の広い車道にある横断歩道の中央部に、安全島（安全地帯）が設置されているのが一般的です。安全島には、安全島指示灯などの標識が設置されています。

まとめ

安全地帯は、路面電車と歩行者の安全を確保するための重要な交通施設です。道路交通法に基づく規制と、ドライバーの安全運転意識が、安全地帯の有効性を高め、交通事故防止に繋がるのです。安全地帯の意義を理解し、ルールを守り、安全な交通社会の実現に貢献することが大切です。

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