小網町停留場

小網町停留場：広島電鉄本線のユニークな停留場

広島電鉄本線にある小網町停留場は、広島市中区堺町二丁目に位置する、路面電車の停留場です。駅番号はM14。この停留場は、広島市内において特異な特徴を持つことで知られています。それは、停留場としてのホームが存在しないという点です。

路面電車と街の織りなす風景

小網町停留場周辺の道路幅はわずか15メートルと狭いため、安全地帯を確保するためのホームを設けることができません。そのため、停留場を示すものは、路面と道路脇の電柱に掲示された案内標識のみです。まさに、路面と一体化した「平面電停」と言えるでしょう。この構造は広島市内では小網町停留場だけに見られる珍しいものです。

この狭い道路環境のため、観音町停留場から小網町停留場間は、時速30kmという制限速度で運行されています。乗客は、道路上に白線で縁取られた黄緑色のゾーンを乗り場として利用します。電車の乗降時には、車内放送で「ホームのない平面電停です」とアナウンスされ、段差への注意が呼びかけられています。

歴史を刻む停留場

小網町停留場は、1912年（大正元年）12月8日、本線が紙屋町から己斐までの区間が開通した際に開業しました。その後、太平洋戦争下の1944年（昭和19年）6月10日から休止となりましたが、広島への原子爆弾投下直後の1945年（昭和20年）8月15日、路線の復旧と同時に営業を再開しています。

1970年代には、隣の土橋停留場との距離が約200メートルと近く、停留場の構造が簡素であることから廃止が検討されました。しかし、周辺住民からの強い要望により、現在もその姿を保ち続けています。この停留場は、単なる交通拠点であるだけでなく、地域住民の生活に密着し、歴史を刻んできた場所と言えるでしょう。

停留場の構造と運行系統

小網町停留場は相対式2面2線の構造です。上り（広島駅方面）の乗り場は線路の北側、下り（広電西広島駅方面）の乗り場は南側に位置しています。掲示物のスペースが限られているため、時刻表や電停名標、路線図は下りの乗り場側の電柱にまとめて掲示されています。

広島電鉄の本線には多くの系統が乗り入れますが、小網町停留場には2号線、3号線、そして0号線が停車します。

停留場周辺の環境

停留場のすぐ西側には天満川が流れ、広島電鉄の路線は広電天満橋で川を渡ります。この橋は、広島電鉄で現存する唯一の電車専用橋であり、歴史的な価値も持ち合わせています。また、停留場の南方には平和大通りが通っており、交通の要衝であるとともに、周辺には多くの商店や住宅が立ち並び、活気のある街並みが広がっています。

隣の停留場

小網町停留場の隣には、土橋停留場（M13）と天満町停留場（M15）があります。

小網町停留場は、その簡素な構造と歴史、そして周辺環境との調和が独特の雰囲気を醸し出す、広島電鉄を代表する停留場のひとつです。

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