安宅 (砲艦)

日本海軍の砲艦「安宅」

「安宅」（あたか）は、日本海軍に属する砲艦であり、その艦名は北陸地方の名勝地に由来しています。この地名は、歴史的にも重要で、源平合戦に関連する伝説が残されていることから、艦の設計にも特別な意味が込められています。当初は「勿来（なこそ）」という名前が付けられましたが、その意味が「来るなかれ」だったため、中国方面での運用に際し、艦名が改名されました。

艦の計画と設計

「安宅」の建造は大正9年度の「八八艦隊完成案」に基づき行われ、艦種は大型砲艦とされました。帝国議会には1隻の建造が計画され、予算は1,094,500円と設定されていました。当初、同日本海域には「宇治」や「嵯峨」といった警備用の砲艦が既に存在していましたが、艦隊の旗艦としての機能や居住性、通信能力には欠陥がありました。このため、「安宅」では以下の点に重点が置かれて設計が進められました：

1. 戦隊旗艦としての設施設計
2. 通信能力の向上
3. 航行能力を考慮した船体強度
4. 旗艦として必要な砲熕兵装の強化
5. 機銃配置の最適化
6. 威風堂々とした外観の追求

設計は田路担が主導し、船体には波に強い設計が施され、司令部や居住区へアクセスしやすい構造が求められました。尖った船首は艦の威容を強調するデザインであり、2つのマストと煙突が真っ直ぐに立っています。

機関と兵装

「安宅」には2基のボイラーが搭載され、最初は石炭を使用していましたが、後に重油専焼に改造され、蒸気の圧力は12.6kg/cm²でした。また、推進システムには直立3気筒3段レシプロエンジンが採用され、2軸で275回転の回転数を誇りました。

兵装に関しては、艦首と艦尾にそれぞれ12センチ砲1門と8センチ高角砲が装備されており、加えて六挺の五年式機銃が艦の各所に配置されていました。特に、ファイティング・トップには機銃が設けられ、河川探査などの際に活用できる設計となっていました。探照灯も2基搭載され、艦の夜間運航能力を高めています。

艦歴と活動

「安宅」は1922年に竣工し、その後すぐに第一遣外艦隊に編入され、中国方面の警備任務に従事しました。艦隊が再編成される中でも旗艦としての役割を果たしました。日中戦争においては、多くの作戦に参加し、特に南京攻略の際には重要な役割を果たしました。

また、太平洋戦争に突入すると、「安宅」は艦尾の備えや兵装の更新を繰り返し、艦歴を重ねていきました。しかし戦争が進むにつれ、艦の状況は厳しくなり、最終的に1945年には中華民国海軍に引き渡され、艦名は「安東」へと変更されました。1949年には人民解放軍に投降し、その後の艦の運命は波乱に富んだものでした。

「安宅」は日本海軍の歴史において特異な存在となり、艦名の由来からその艦の生涯まで、様々な側面から語り継がれています。

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