安寅植

安寅植（アン・インシク）について

安寅植（アン・インシク、안인식、1891年11月14日 - 1969年3月16日）は、朝鮮の教育界および儒教界に多大な影響を与えた学者です。彼は日本の統治時代において、主に儒教の教えに基づき、教育者として活動しました。字は公鵲（공작）、号は嵋山（미산）、彼の本籍は忠清南道唐津郡（今でいう唐津市）であり、後に朝鮮儒者の「皇道儒学」論の主要な論者として評価されています。

学生時代と教育者としての始まり

日本の統治が始まった初期には、安寅植は公立学校の教諭として仕事をしていました。教育に情熱を持ち、京城高等普通学校に付設された臨時教員養成所（後の京城師範学校）で学びました。後に東京に渡り、1925年に大東文化学院高等科に入学。1929年には第3期生として卒業しました。この学び舎での経験が、彼の教育者としての基礎を築くことになります。

1930年代からは朝鮮総督府の明倫学院の講師として、儒教推進のために尽力しました。経学院の司成としても活躍し、教育機関の発展及び儒教の振興に寄与しました。

戦時中の活動

安寅植は日中戦争が勃発した1937年に、時局に対する演説を行い、その後も戦争協力行為に従事しました。1944年には、総督府発行の雑誌『朝鮮』に「皇道儒学の本領」というタイトルで文章を発表し、著述活動を通じて彼の思想を広めました。

また、1942年に組織した朝鮮中堅儒林聖地参拝団では団長を務め、日本の神社を聖地として参拝しました。これを皮切りに、「皇道儒学」についての研究を行い、1943年には朝鮮儒道連合会の教育部長として新たな綱領を打ち出しました。その中で「皇道精神に基づく皇道儒学を確立する」ことを掲げ、その後も様々な団体に参加しました。

戦後の足取り

1949年、安寅植は反民族行為処罰法に基づき逮捕され、特別調査委員会で起訴されました。彼は、皇道儒学に関する著作の存在を問題視されましたが、一時的に保釈されました。戦後の彼の活動は一貫して波乱に満ちており、国民精神の向上を目指し、朴正煕政権下で儒教の有効性を主張する論文を発表しました。

評価と遺産

2008年、民族問題研究所は彼を『親日人名辞典』に収録するためのリストに追加し、2009年には親日反民族行為真相糾明委員会によって705人の親日反民族行為のリストに名前が挙がりました。これにより、彼の生涯における業績と戦後評価には複雑な背景があることがわかります。

安寅植は、朝鮮の教育界や儒教界に多大な影響を残した人物であり、彼の活動は今日でも議論の対象となっています。

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