安祥院 (徳川家重側室)

安祥院（あんしょういん）

安祥院は、江戸幕府9代将軍・徳川家重の側室として知られています。彼女の生涯は、将軍の寵愛、側室間の確執、そして大奥の複雑な人間関係に深く関わっています。

生涯

安祥院は享保6年（1721年）に三浦義周の娘として生まれました。後に松平親春の養女となり、元文元年（1736年）に西御丸に出仕しました。その後、家重の側室となり、延享2年（1745年）には家重の次男である万次郎（後の徳川重好）を産みました。

安祥院の生涯において特筆すべきは、家重の寵愛を巡る側室間の確執です。特に、家重の長男・竹千代（後の徳川家治）を生んだ側室・至心院との間には、深い対立があったと伝えられています。

当初、家重は正室の死後、至心院を寵愛し、「お部屋様」とまで崇めました。しかし、次第に家重の寵愛は安祥院へと移ります。酒と女に溺れるようになった家重に対し、至心院が諫めたものの、家重はこれを聞き入れず、至心院を疎むようになります。

ある時、家重が安祥院と睦み合っている最中に至心院が部屋に入ってきたことに激怒し、至心院を牢に閉じ込めるという事件が起こりました。この事態を知った義父の徳川吉宗が、「嫡男の生母を牢に閉じ込めるのは良くない」と注意したため、至心院は牢から解放されましたが、家重と至心院の仲が修復することはなかったと言われています。

宝暦11年（1761年）に家重が亡くなると、安祥院は落飾し、寛政元年（1789年）4月6日に69歳でその生涯を閉じました。戒名は安祥院受徳光潤大姉。墓所は寛永寺にあります。

人物像

安祥院は、将軍の寵愛を受けた女性として、大奥という特殊な環境の中で生き抜きました。彼女の生涯は、当時の大奥における権力闘争や人間関係の複雑さを物語っています。また、彼女と至心院との確執は、将軍の寵愛が女性たちの運命を大きく左右したことを示しています。

安祥院の存在は、江戸幕府の将軍家における内情を理解する上で、重要な要素の一つであると言えるでしょう。

参考文献

雲村俊慥『大奥の美女は踊る』（PHP研究所、2006年）
高柳金芳『大奥の秘事』（雄山閣、2003年）

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