安芸津広

安芸津広：東宝特撮映画を彩った名脇役

安芸津広（あきつ ひろし）は、1906年（明治39年）9月8日、広島県安芸郡に生まれた日本の俳優です。没年は不明です。旧芸名には「安芸津宏」「安芸津融」などがありました。

東宝映画の専属俳優として活躍した安芸津は、数多くの作品に出演しました。クレジットは少ないものの、戦前から幅広いジャンルの映画で存在感を示しました。特撮映画においては、村人役などで頻繁に画面に映っています。その芸名は、出身地である安芸郡に由来し、著名な語り部の徳川夢声によって名付けられました。

安芸津の出演作は実に多岐に渡ります。代表作であるゴジラシリーズでは、『ゴジラ』（1954年）から『ゴジラ対ヘドラ』（1971年）まで、島民や記者、防衛隊幹部など様々な役柄を演じました。他の特撮作品でも、『透明人間』（1954年）や『空の大怪獣ラドン』（1956年）など、多くの作品に参加しています。

特撮映画以外では、『七人の侍』（1954年）のような時代劇や、『生きる』（1952年）のような社会派ドラマなど、ジャンルを問わず幅広い作品に出演しています。黒澤明監督作品への出演歴も確認できます。

クレージー映画にも多数出演しており、『ホラ吹き太閤記』（1964年）、『クレージーの無責任清水港』（1966年）など、コメディ作品でもその演技の幅を見せています。さらに、『連合艦隊司令長官 山本五十六』（1968年）などの8.15シリーズや、ウルトラシリーズ、『桃太郎侍』などのテレビドラマにも出演していました。

1971年以降は、映画出演の記録がありません。東宝の同僚であった加藤茂雄氏と記平佳枝氏の証言によると、広島で被爆した経験を持つ人物であったと伝えられています。

安芸津広は、名前こそ広く知られていないものの、日本の映画史において重要な脇役として数多くの作品に貢献しました。その豊富な出演作と、被爆者としての経験は、彼の生涯が特異なものであったことを示しています。戦後の日本の映画界を支えた、影の功労者の一人と言えるでしょう。彼が残した数々の作品は、今後も日本の映画史研究において重要な資料となるはずです。

主な出演作品（抜粋）

映画
ゴジラシリーズ（複数作品）
七人の侍（1954年）
生きる（1952年）
透明人間（1954年）
クレージー映画シリーズ（複数作品）
8.15シリーズ（複数作品）
テレビドラマ
ウルトラQ（1966年）
ウルトラマン（1966年）
桃太郎侍（1967年）

参考文献

『東宝特撮映画全史』
『ENCYCLOPEDIA OF GODZILLA ゴジラ大百科 [メカゴジラ編]』
洋泉社MOOK 別冊映画秘宝
『別冊映画秘宝 モスラ映画大全』
『別冊映画秘宝 初代ゴジラ研究読本』
『東宝特撮映画大全集』
野村宏平、冬門稔弐『ゴジラ365日』

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