関前村

関前村（せきぜんむら）とは

関前村は、かつて愛媛県東予地方に存在した村です。2005年1月に今治市との合併により、その歴史に幕を閉じました。この合併により、愛媛県から「村」という地方自治体の区分が消滅したことでも知られています。

地理

関前村は、今治港の北西に位置する島しょ群にあり、有人島である岡村島、大下島、小大下島の3島を中心に、周辺の無人島を含めたエリアを管轄していました。これらの島々は芸予諸島（または関前諸島）の一部であり、瀬戸内海の美しい自然に囲まれています。西側には広島県の大崎上島があり、ミカンの栽培が盛んに行われていました。

かつては石灰岩の採掘が盛んでしたが、資源の枯渇とともに事業者は島を去り、その跡地は現在、水源として活用されています。

村名の由来

関前村の名前は、中世の瀬戸内海航路において、潮待ちの関の手前に位置していたことに由来します。この地理的な特徴が、「関前」という名前を生み出しました。

地域

村は、大下、岡村、小大下の3つの行政区から構成されていました。それぞれが島をなしており、自然村としてのまとまりを保っていました。合併後、行政区名には「関前」が冠され、例えば「今治市関前大下」のように表記されます。

歴史

戦国時代には、村上水軍の出城が築かれていました。江戸時代に入ると、伊予松山藩の領地となり、瀬戸内海航路の中継地として栄えました。1889年には、岡村と大下村が合併して関前村が誕生しました。

主な沿革

1838年：小大下島が分割され、岡村と大下村に編入。
1889年：岡村・大下村の合併により関前村が発足。
1903年：岡村・大下漁業組合設立。
1946年：南海大地震で大きな被害。
1950年：観音崎が瀬戸内海国立公園に編入。
1959年：離島振興地域に指定。
1975年：小大下鉱山が閉山。
1995年：岡村大橋が開通し、広島県と接続。
2005年：今治市との合併により自治体としての関前村が消滅。
2008年：豊島大橋の開通により、岡村島が本州と陸続きに。

行政

村役場は岡村島にあり、合併後は今治市役所関前支所となりました。歴代の村長には、官選と民選の両方が存在し、それぞれが村の発展に貢献しました。

歴代村長

官選村長
初代: 井村亮 (1889年 - 1900年頃)
第2代: 井村利達 (19??年 - 19??年)
第3代: 檜垣信庸 (19??年 - 19??年)
第4代: 村上利右衛門 (19??年 - 19??年)
第5代: 井村篤夫 (19??年 - 19??年)
第6代: 井村亮 (1920年 - 1935年)
第7代: （不明）(193?年 - 193?年)
第8代: 井村亮 (1938年 - 1945年)
第9代: （不明） (194?年 - 194?年)
民選村長
初代: 美藤清文 (1947年 - 1983年)
第2代: 美藤芳人 (1983年 - 1991年)
第3代: 池田深 (1991年 - 2003年)
第4代: 久保一士 (2003年 - 合併まで)

財政

離島という地理的条件から財政は非常に厳しく、地方交付税の削減も重なり、合併直前には財政再建団体となる可能性がありました。

宗教

村内には、神道と仏教の様々な寺社が存在します。

神道：えびす神社、木ノ山神社、里浦荒神社、白方荒神社、早津佐神社、姫子島神社、宮浦荒神社、山神社、龍神神社など
仏教：智勝寺（現在は廃寺）、法珠寺、善照寺、照方寺、救世観音堂など

教育

村内には、保育園、小学校、中学校がありましたが、高等学校はなく、進学には旧今治市内まで行く必要がありました。

保育園・保育所: 関前村立岡村保育所
小学校: 関前村立岡村小学校、関前村立大下小学校（廃校）
中学校: 関前中学校

交通

村内には鉄道がなく、主な交通手段は村営フェリーでした。今治港や広島県の島々を結んでいましたが、合併後は今治市営フェリーとして運行されています。

道路は、岡村島と広島県の大崎下島が橋で結ばれており、本州へのアクセスも向上しました。

出身有名人

関前村出身の著名人として、アナウンサーの長野翼氏、東京農業大学名誉教授の桧垣宮都氏、航空幕僚副長の菊川忠継氏、北京五輪女子ソフトボール代表総監督の井川英福氏、昭和女子大学創立者の妻である人見緑氏、牧師の美藤章氏などがいます。

ゆかりの有名人

俳優の森繁久弥氏が、大下に詩碑を残しています。

まとめ

関前村は、瀬戸内海の自然と歴史に彩られた美しい村でした。合併により自治体としては消滅しましたが、その名は今もなお、人々の記憶に残り続けています。

もう一度検索