安藤寿康

安藤寿康（あんどうじゅこう、1958年 - ）は、日本の心理学者、行動遺伝学者であり、慶應義塾大学の名誉教授です。彼の研究は、人間の行動や発達に遺伝と環境がどのように影響するかを詳細に分析し、特に双生児研究を通じて、認知能力、パーソナリティ、教育における遺伝的要素の役割を解明しています。

生い立ちと学歴

安藤氏は東京都で生まれ、神奈川県で育ちました。1976年に神奈川県立湘南高等学校を卒業後、1981年に慶應義塾大学文学部を卒業しました。その後、1986年に慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程を単位取得満期退学しています。1997年には、「遺伝と教育 -人間行動遺伝学的アプローチ」の研究で慶應義塾大学から博士（教育学）の学位を取得しました。

キャリア

1992年に慶應義塾大学文学部の専任講師として教鞭をとり始め、1993年に助教授、2001年に教授に昇進しました。2023年に慶應義塾大学を退職し、名誉教授の称号を得ています。

研究分野

安藤氏の専門は行動遺伝学と教育心理学です。特に、認知能力やパーソナリティの発達に及ぼす遺伝と環境の影響について、双生児法を用いた研究を精力的に行っています。この研究を通じて、教育環境が個人の発達に与える影響を遺伝的な側面から明らかにしようとしています。

著書

安藤氏は、数多くの著書を通じて、遺伝と環境が人間の行動に及ぼす影響について一般読者にもわかりやすく解説しています。主な著書には、以下のようなものがあります。

『遺伝と教育人間行動遺伝学的アプローチ』（風間書房、1999年）
『心はどのように遺伝するか双生児が語る新しい遺伝観』（講談社ブルーバックス、2000年）
『遺伝マインド遺伝子が織り成す行動と文化』（有斐閣、2011年）
『遺伝子の不都合な真実すべての能力は遺伝である』（ちくま新書、2012年）
『遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門』（培風館、2014年）
『日本人の9割が知らない遺伝の真実』（SBクリエイティブ(SB新書)、2016年）
『「心は遺伝する」とどうして言えるのか: ふたご研究のロジックとその先へ』（創元社、2017年）
『なぜヒトは学ぶのか教育を生物学的に考える』（講談社現代新書、2018年）
『生まれが9割の世界をどう生きるか　遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋』（SBクリエイティブ、2022年）
『能力はどのように遺伝するのか　「生まれつき」と「努力」のあいだ』（講談社ブルーバックス、2023年）
『教育は遺伝に勝てるか？』（朝日新書、2023年）

これらの著書では、遺伝が人間の行動や能力に大きな影響を与えるという事実を指摘しつつ、環境や教育が持つ意味についても深く考察しています。

共編著

安藤氏は、他の研究者との共同研究も積極的に行っており、以下のような共編著があります。

『ふたごの研究これまでとこれから』（詫摩武俊、天羽幸子共著、ブレーン出版、2001年）
『事例に学ぶ心理学者のための研究倫理』（安藤典明共編、ナカニシヤ出版、2005年）
『パーソナリティ心理学人間科学、自然科学、社会科学のクロスロード』（榎本博明、堀毛一也共著、有斐閣アルマ、2009年）
『乳幼児のための脳科学 DVDブック子どもたちは未来別巻』（小泉英明編著、多賀厳太郎、安梅勅江共著、フリーダム、2010年）
『発達科学入門』1-3（高橋惠子、湯川良三、秋山弘子共編、東京大学出版会、2012年）
『運は遺伝する　行動遺伝学が教える「成功法則」』（橘玲共著、NHK出版、2023年）

翻訳

海外の行動遺伝学の重要な文献の翻訳も手掛けており、以下の翻訳書があります。

R.プロミン『遺伝と環境人間行動遺伝学入門』（大木秀一共訳、培風館、1994年）
ケリー・L.ジャン『精神疾患の行動遺伝学何が遺伝するのか』（大野裕監訳、佐々木掌子、敷島千鶴、中嶋良子共訳、有斐閣、2007年）
マイケル・ラター『遺伝子は行動をいかに語るか』（培風館、2009年）

科学研究費（KAKEN）

安藤氏は、科学研究費助成事業（KAKEN）において、数多くの研究代表者を務めています。これらの研究は、双生児法を用いた教授・学習過程の行動遺伝学的研究、算数・数学能力への遺伝的影響と教育環境との交互作用に関する研究、高次精神機能や社会性、メンタルヘルスの遺伝的基盤の研究など、多岐にわたります。また、教育脳の脳神経学的・行動遺伝学的研究も行っています。

科学技術振興機構プロジェクト

安藤氏は、科学技術振興機構（JST）のプロジェクトにも参加し、「双生児法による乳児・幼児の発育縦断研究」に取り組んでいます。

研究の影響と社会への貢献

安藤氏の研究は、教育における遺伝的要素の重要性を指摘するとともに、個人の能力や行動が遺伝と環境の相互作用によって形成されることを示唆しています。彼の研究成果は、教育政策や子育てにおける新たな視点を提供し、より効果的な教育実践に貢献することが期待されています。

外部リンク

* “親ガチャ”と遺伝の関係　本来の意味を超えて広がった背景とは

安藤寿康氏は、遺伝と環境に関する深い知見に基づき、人間の行動と発達のメカニズムを解明し続ける、行動遺伝学の第一人者です。

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