安豊郡

安豊郡（あんほう-ぐん）は、中国にかつて存在した郡であり、その歴史は三国時代にまで遡ります。具体的には、220年（魏の黄初元年）に、廬江郡を分割して新たに安豊郡が設置されたのが始まりです。この時、安豊郡は豫州に属していました。

西晋時代には、安豊郡は安風、雩婁、安豊、蓼、松滋の5県を管轄していました。しかし、その後の東晋時代には、尋陽に安豊郡が僑置（きょうち）されるという変化がありました。僑置とは、故郷を離れた人々が一時的に別の場所に郡を設置することを指します。ただし、この僑置された安豊郡は、安帝の時代に廃止され、弋陽郡に編入されています。

南北朝時代に入ると、南朝宋の末年に再び安豊郡が置かれました。この時の安豊郡は南豫州に属し、安豊と松滋の2県を管轄していました。続く南朝斉の時代には、安豊郡は豫州に属し、雩婁、新化、史水、扶陽、開化、辺城、松滋、安豊の8県を管轄するようになり、管轄範囲が広がりました。

北魏の時代になると、景明年間には安豊郡は揚州に転属しました。その後、孝昌年間に南朝梁に一時的に奪われますが、武定年間に東魏が再び奪還しています。この時期の安豊郡は、安豊と松滋の2県を管轄していました。

隋の時代に入り、583年（開皇3年）に隋が郡制を廃止した際、安豊郡もその歴史に幕を閉じ、揚州に編入されることとなりました。このように、安豊郡は三国時代から隋初にかけて、その所属や管轄県を変えながら、中国の地方行政の一翼を担ってきました。

安豊郡の歴史は、中国の行政区画の変遷を理解する上で重要な事例の一つと言えるでしょう。各王朝の興亡や勢力争いの中で、郡の所属や管轄範囲が変化していく様子は、当時の政治情勢を反映していると言えます。また、僑置という特殊な形態での存在も、当時の社会状況を物語るものとして興味深い点です。

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