宋訥

宋訥（そう とつ）

宋訥（1311年 - 1390年）は、元末から明初にかけての儒学者・教育者であり、字を仲敏、号を西隠と称しました。滑州白馬県（現在の河南省滑県）の出身で、父は元の侍御史であった宋寿卿です。

生涯

宋訥は至正23年（1363年）に進士に合格し、塩山県尹に任じられましたが、官を辞して故郷に帰りました。洪武2年（1369年）、洪武帝が儒学者18名に命じて礼楽諸書の編纂を行った際、宋訥もその一人に選ばれました。編纂事業が終わると、再び官職に就くことなく故郷に戻りました。

洪武13年（1380年）、四輔官の杜斅の推薦によって国子助教に任じられ、教育者としてのキャリアを本格的にスタートさせます。その後、洪武15年（1382年）には翰林学士に抜擢され、「宣聖廟碑」の撰述を命じられました。さらに文淵閣大学士を経て、洪武16年（1383年）には国子祭酒に転じ、教育機関の最高責任者として活躍しました。

洪武18年（1385年）には、科挙が再開され、多くの進士が誕生しましたが、その3分の2が国子監の出身者であったことを洪武帝は大変喜び、宋訥は褒美を受けました。しかしその後、国子助教の金文徴らが宋訥が病気であると吏部尚書の余熂に伝え、吏部から宋訥に致仕を命じる文書が出されました。これを知った洪武帝は、事情を問いただして激怒し、余熂や金文徴らを処刑し、宋訥を国子祭酒の職に留めました。

洪武23年2月18日、宋訥は私邸で死去しました。享年80歳。諡は文恪といい、著書には『東郡志』16巻と『西隠集』10巻があります。

人物・逸話

宋訥は慎重な性格で、学問に広く通じていました。学問に熱心なあまり、寒さで火を使っていた際、衣服に火が燃え移り、皮膚が焼けるまで気づかなかったという逸話も残っています。この件を洪武帝に注意され、学問に熱中しすぎないようにと警告を受けたそうです。

国子監では、功臣の子弟たちが多く在籍していましたが、宋訥は厳しい学規を設けました。学生たちは一日中正座して経書の解釈を学び、夜も学舎に留まって勉学に励みました。宋訥自身も常に学生たちと共に学び、その教育熱心さには目を見張るものがありました。

病床にあった際、洪武帝は宋訥を心配し、「彼には長寿の相があるから心配ない」と述べ、その言葉通り、宋訥はほどなく回復しました。また、洪武帝が宋訥の肖像画を描かせた際、その肖像画は怒った表情で描かれていました。その翌日、洪武帝が宋訥に理由を尋ねると、宋訥は「学生が不注意で茶器を壊したことを恥じていた」と答えたため、洪武帝は宋訥の責任感の強さに感心したと伝えられています。

洪武帝が辺境政策についての意見を求めた際、宋訥は遠征による無益な費用を避けるために、東西五百里を制として分屯し、要害に布陣して連絡を取り合い、敵が来たら戦い、敵が退いたら屯田を耕すべきだと進言しました。

また、宋訥は亡くなる直前まで教育に情熱を注ぎ続けました。病状が悪化しても、学舎に留まり続けたため、長男の宋麟が自宅に戻るように勧めたところ、「丁祭の時なので、孔子に敬意を払わないわけにはいかない」と叱責し、丁祭が終わると、自宅に戻り、息を引き取りました。

子女

宋麟（長男、進士、御史、望江主簿）
宋復祖（次男、国子司業）


宋訥は、学問に対する深い知識と情熱、そして教育者としての卓越した手腕によって、明代初期の教育界において重要な役割を果たした人物でした。彼の生涯と業績は、後世に多大な影響を与えたと言えるでしょう。

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