宗像誠也

宗像誠也：戦前・戦後の教育改革を担った教育学者

宗像誠也（1908年4月9日-1970年6月22日）は、日本の教育学界に大きな足跡を残した教育学者です。東京大学名誉教授として、同僚の勝田守一、宮原誠一と共に「東大教育の3M」と称され、戦後日本の教育改革に多大な貢献を果たしました。本稿では、その生涯と業績、思想を詳細に探ります。

教育者としての歩み：東京高等師範学校から東京大学へ

東京生まれの宗像は、講道館訓育指南や旧制畝傍中学校校長を務めた宗像逸郎を父に持ち、1926年に東京高等師範学校附属中学校（現・筑波大学附属中学校・高等学校）を卒業。勝田守一と同級生でした。その後、旧制浦和高校を経て東京帝国大学文学部教育学科を卒業し、阿部重孝に師事しました。

戦前には、岩波書店刊行の雑誌『教育』を介して児童学研究会に参加し、留岡清男らと共に教育科学研究会の設立に尽力、教育科学運動を推進しました。立教大学講師や東京文理科大学教授も務めました。

戦時下の教育観と戦後の反省

戦時中は、雑誌『改造』に寄稿し、徴兵による国民教育を唱えるなど、当時の社会情勢に影響を受けた発言も行っています。しかし、戦後、東京大学教育学部教授に就任すると、戦時中に分解した教科研の再建に尽力。自身の戦時中の言動を深く反省し、その経験を踏まえて戦後教育の再建に貢献しました。これは、戦後、自身の戦争協力への反省を公に発表した稀有な例であり、高く評価されています。

教育現場と理論の融合：実践的研究と「内外事項区別論」

宗像は、学問的研究を大学や書斎に閉じ込めることなく、常に教育現場に足を運び、実践的研究に励みました。理論と実践の統一を重視し、権力に屈することなく、人間の尊厳の確立を目指した教育を追求しました。

特に注目すべきは、「内外事項区別論」です。これは、国家の教育統制はハード面（例えば、学校施設の整備など）に限定すべきであり、カリキュラム編成などのソフト面は、「真理のエージェント」としての教師の専任事項であるとする理論です。この考え方は、後の堀尾輝久の公教育論に大きな影響を与え、勤評、学力テスト、教科書検定など、様々な教育闘争における民側の理論的支柱となりました。

教育への多大な貢献とその後

宗像誠也は、戦前・戦後の教育改革において中心的な役割を果たし、その業績は高く評価されています。教育現場での実践的研究、理論と実践の統合、反権力的な姿勢、そして「内外事項区別論」など、その教育思想は現代の教育にも通じるものがあります。

その功績を称え、青木書店からは『宗像誠也教育学著作集』（全5巻）が刊行されています。彼の著作や論文は、現代の教育研究者にとっても貴重な資料であり、今後も研究が続けられるでしょう。 宗像誠也の生涯と業績は、日本の教育史において重要な位置を占め、今後の教育の発展にも示唆に富むものです。

主要論文

「國民敎育最低標準設定の規準」『教育科学研究』第1巻3号 (1939)
「『時間的空間的文化生活體制』と『社會科』」『教育科学研究』第2巻5号 (1940)

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