宗氏

宗氏（そうし）

宗氏は、鎌倉時代から明治初期にかけて対馬島を支配した日本の氏族であり、武家、華族でした。江戸時代には対馬藩として朝鮮との外交・貿易を独占的に担い、明治維新後は華族の伯爵家に列せられました。

歴史

出自

宗氏の家伝によれば、鎌倉時代初期に太宰少弐武藤資頼の家臣として、対馬最大の豪族阿比留氏を討伐した宗重尚が初代とされています。重尚は桓武平氏清盛流で、平知盛の孫とされるものの、実際には大宰府在庁官人の惟宗氏であると考えられています。

対馬藩の公撰資料である「宗氏家譜」には、寛元4年（1246年）に重尚が阿比留平太郎を滅ぼし、父知宗から家督を譲り受け、祖母の氏である惟宗を姓としたと記されています。

実在が確実な最初の当主は、対馬国地頭代を務めた宗助国（資国）であり、文永11年（1274年）の元寇（文永の役）において一族郎党80余騎と共に佐須浦で戦死しました。

宗氏は、武藤氏（少弐氏）の守護代・地頭代として対馬島で台頭しました。鎌倉後期には、少弐氏-宗氏のラインによる対馬島支配が強まり、公事徴収・免除権、所領安堵権などを掌握しました。

南北朝・室町時代

南北朝時代から室町時代にかけても、惣地頭少弐氏と地頭代宗氏の関係は維持されましたが、14世紀後半以降、宗氏による対馬の領国形成が見られるようになります。宗澄茂は少弐氏から筑前守護代にも任じられ活動範囲を北九州に広げました。

15世紀初頭には、宗貞茂が北九州の争乱に少弐氏の家臣として参加する一方で、対馬では一族の反乱も起きました。貞茂と貞盛は両国内や朝鮮に対して「守護」を自称しましたが、室町幕府の対馬守護になったわけではありませんでした。幕府が宗氏を対馬の知行主と認識するようになったのは、永享5年（1433年）に少弐満貞が処罰された後です。

文安2年（1445年）から宝徳元年（1449年）にかけて、宗氏は本姓を惟宗から平氏に変えました。これは、大宰府在庁官人としての惟宗姓が少弐氏との主従関係を象徴するため、少弐氏との関係を清算する意味合いがありました。

戦国時代の各書では宗氏が対馬守護となっていることが確認できます。宗氏がいつ対馬守護に任じられたかは明確ではありませんが、永享6年（1434年）から寛正6年（1465年）の間だと考えられています。

対馬は山地が多く耕地が少ないため、宗氏は朝鮮との貿易による利益に依存していました。室町時代初期は、西国の大名、商人、それに対馬の諸勢力が独自に貿易を行っていましたが、宗氏は倭寇対策などを利用して、次第に独占的地位を固めていきました。宗氏は朝鮮に「倭館」と呼ばれる日本人居留地を建設し、朝鮮貿易で強い影響力を持ち続けました。

戦国時代・安土桃山時代

戦国時代は九州本土進出を図りましたが、毛利氏、島津氏、大友氏、龍造寺氏に阻まれ難航しました。九州征伐では豊臣秀吉に臣従し本領を安堵され、文禄・慶長の役では、宗義智が日本軍の先頭に立って朝鮮及び明を相手に戦い活躍しました。また戦闘だけでなく日本側の外交を担当する役割も担い折衝に当たりました。

江戸時代

宗義智は関ヶ原の戦いで西軍に属しましたが、徳川家康により本領を安堵され、対馬[[府中藩]]主家となりました。対馬藩は江戸時代を通じて、徳川幕府が唯一正式な国交を持った朝鮮との外交実務や貿易業務を独占的に担い続けました。慶長14年（1609年）には朝鮮との間に己酉約条を締結し、日朝間の外交貿易の基本構造を定めました。

対馬島は米の生産力が低く無高でしたが、朝鮮との外交・貿易を扱っている功績から、幕府は宗家に国主格、10万石格を認めました。藩主の官位も国主大名格の従四位下侍従に叙され、対馬守の官職を代々世襲しました。

対馬藩の財政は米の生産には依存しておらず、その大部分は朝鮮貿易に依存していました。17世紀後半は貿易の活況や銀山再開発の成功により対馬藩は「西国一の分限」と称されましたが、18世紀に入ると貿易不況と銀山衰退で財政難に陥りました。

参勤交代は特例で3年に一度でよいとされていました。対馬島と各領地、江戸屋敷だけではなく、京都や大坂、壱岐勝本、博多（のちに廃止）、長崎にも蔵屋敷を持っていました。朝鮮釜山には倭館を持ち、そこには数百名の家臣・商人が常駐していました。

明治以降

最後の対馬藩主宗重正は、1869年（明治2年）の版籍奉還で厳原藩（改名）の藩知事に任じられるとともに華族に列しました。1884年（明治17年）の華族令施行で華族が五爵制になると、翌8日に重正は伯爵に叙せられました。

宗家の朝鮮外交権の外務省への移譲の経緯

明治維新後、新政府は当初、宗氏に朝鮮外交の家役を継続させましたが、外交権の一元化を目指す政府（外務省）と、先祖伝来の外交権を守ろうとする宗氏との間で対立が生じました。最終的に、明治4年（1872年）に外務省は宗氏の家役を罷免し、朝鮮外交権を掌握しました。

宗家が伯爵に叙された経緯

1884年（明治17年）の華族令施行で華族が五爵制になると宗重正は伯爵に叙せられています。華族令施行とともに定められた「叙爵内規」では旧諸侯の伯爵の基準は現米5万石以上の中藩知事ですが、旧厳原藩の現米は3万5413石であり、伯爵の基準を満たしていませんでした。宗家は松浦家と違って理由の説明をされていないが、同家が国主格だったことが関係しているのではないかと推測されています。

歴代当主

重尚
資国（助国）
盛明
盛国
経茂
澄茂
頼茂
貞茂
貞盛
成職
貞国
材盛
義盛
盛長
将盛
晴康
義調
茂尚
義純
義智
義成
義真
義倫
義方
義誠
方熈
義如
義蕃
義暢
義功（猪三郎）
義功（富寿）
義質
義章
義和
義達（重正）
重望
武志
立人

主要家臣

柳川調信
雨森芳洲
* 陶山訥庵

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