官省符荘 (紀伊国)

官省符荘について

官省符荘（かんしょうのふしょう）とは、かつて紀伊国の伊都郡に位置した歴史的な荘園です。現在の和歌山県橋本市、かつらぎ町、九度山町にあたるこの地域は、特に高野山金剛峯寺と深い関わりを持ち、その影響下にあったため、別名高野本荘や金剛峯寺荘と呼ばれることもあります。

この荘園は、平安時代末期に成立し、河南・河北・下方という三つの地域から構成されていました。河南は金剛峯寺の政所があったことから、特にその重要性が高まりました。1004年に太政官から寺田としての領有を認められたことで、金剛峯寺は実質的な支配を確立し、1023年には藤原道長から新たな土地を受け取り、さらに1048年には頼通が北岸地域を施入しました。このように、荘園は徐々に拡大していきました。

1049年、金剛峯寺は朝廷に対し、紀伊国内に散在する寺領を集約し、一元支配を求めました。その結果、朝廷はそのリクエストを受け入れ、官省符荘が正式に成立しました。この荘園の領域は約10キロメートル×8キロメートルに広がり、さまざまな在地土豪が存在したものの、金剛峯寺は彼らとの関係を巧妙に扱い、支配を強化していきました。

特に、荘内には坂上氏や長（なが）氏といった伝統的な豪族がいましたが、金剛峯寺はこれらの勢力を排除し、12世紀の初めまでには直接的な支配を確立しました。荘官を配置することなく、政所などの寺僧が分担して荘内を管理し、年貢は寺に納める形態が取られていました。

鎌倉時代に入ると、新たに殿原と呼ばれる有力農民の台頭が見られましたが、金剛峯寺は彼らを政所の業務に関与させることでその支配体制を強化しました。このように、金剛峯寺は荘園制度が他地域で揺らぐ中でも着実に権益を確保し続けました。

1337年と1394年には、荘内の検注が実施され、特に1394年の「大検注」は3年にも及びました。この結果、官省符荘は約300町以上の田地と80町以上の畠地を持つ規模とされています。しかし、戦国時代末期には金剛峯寺の支配が続いていましたが、1590年に豊臣政権が寺の所領を一時没収し、官省符荘もその影響を受けました。

その後、豊臣政権から寺領は返還されることとなり、江戸時代に入っても「官省符荘」という名称は地域を表す固有名詞として使われ続けました。歴史的背景や変遷を持つこの荘園は、地域における宗教の重要性とその経済的役割を象徴する事例となっています。

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