定府

定府の概要

江戸時代において、「定府」とは江戸に定住した将軍や藩主、さらにその家臣たちの状態を示す言葉です。この概念は、将軍や藩主が参勤交代を行わず、江戸に居住する際に用いられました。特に、徳川幕府の運営や政治において、定府であることは重要な役割を果たしていました。

定府と幕臣・藩主

定府には主に二つのカテゴリがあります。一つは幕臣、もう一つは定府大名です。幕臣としては、参勤交代を行わない旗本や御家人が含まれ、彼らは江戸に定住しながら将軍に仕えていました。そのため、彼らもまた定府に該当します。

また、諸大名の中でも、徳川家康によって江戸に定住することが定められていた水戸徳川家や、江戸城に常駐する藩主たちも、幹部職にあたる者たちが江戸に居を構えなければならなかったため、定府とされました。このように、幕府の政策や江戸の地理的、政治的な状況が、定府という概念の形成に寄与していたことが分かります。

定府藩士の特徴

定府に該当する藩士、すなわち将軍の陪臣は、江戸の屋敷に常に留まる者として位置付けられました。彼らは一般的に、江戸に家族や菩提寺、壇那寺を持ち、江戸で亡くなった場合でもその遺体を元の地に戻すことは少なく、江戸に留まる傾向が強かったのです。

藩主が参勤交代を行っている間に、江戸にとどまる者は「江戸詰め」と呼ばれ、定府とは別の存在として区分されました。興味深い事例として仙台藩では、江戸常勤を「江戸定詰め」とし、逆に国元に常に在住することを「定府」と呼ぶなど、地域によって異なる呼び方も見られました。

主な定府大名

江戸時代には、定府として知られる大名が数多く存在しました。特に知られているのは、御三家や親藩にあたる水戸藩徳川家や、守山藩、府中藩など、松平家の連枝であり、これらの家系は江戸に定住して幕府に寄与していました。

譜代大名や外様大名の中にも多くの定府があり、時に生活基盤や政治的役割が異なるケースがみられました。たとえば、岡部藩や伊勢西条藩、広島新田藩、米沢新田藩なども定府の一員として名を馳せていたことが分かります。

定府の変遷と影響

時代が進むにつれて、定府の役割は変化していきました。もともとは参勤交代が基本であった多くの藩について、定府への道が開かれることとなり、多くの大名が江戸に居住することとなりました。これにより、地方との関係性も変わり、江戸と地方の経済的、政治的な結びつきが強まったことは重要な要素です。

まとめ

定府は、江戸時代における江戸の中心的な存在である将軍や藩主、そしてその家臣たちを指し、参勤交代の制度や江戸の政治構造に大きな影響を与えていました。定府という概念には、幕府の政策や社会的背景を透かす様々な要素が詰まっており、江戸時代の政治や社会を理解する上でも欠かせない存在となっています。

もう一度検索