伊勢西条藩

伊勢西条藩（いせさいじょうはん / いせにしじょうはん）とは

伊勢西条藩は、江戸時代に伊勢国河曲郡西条村（現在の三重県鈴鹿市西条付近）を拠点とした藩です。1726年（享保11年）に徳川吉宗の側近であった有馬氏倫が加増を受け、大名に取り立てられたことで立藩しました。藩主は代々江戸に常駐する定府であり、領地は伊勢国、下野国、上総国に分散していました。伊勢国の領地を管理する陣屋は、後に河曲郡南林崎村（現在の鈴鹿市林崎・南林崎町付近）に移され、南林崎藩とも呼ばれることもありました。

1781年（天明元年）に上総国五井（現在の千葉県市原市五井）に拠点を移してからは五井藩と呼ばれ、有馬家は定府を解かれ、半年ごとの参勤交代を行うようになりました。しかし、伊勢国の南林崎村などの領地の一部は、廃藩置県まで有馬家（五井藩、のち下野吹上藩）の領地として存続しました。

歴史

前史

伊勢西条藩の藩主を務めた有馬家は、もともと筑後久留米藩主家の分家にあたる摂津有馬氏の系統です。久留米藩初代藩主である有馬豊氏の三男・有馬頼次を祖とし、頼次は徳川忠長に仕えて1万石を得ていましたが、忠長の改易によって所領を失いました。頼次の跡を継いだ有馬吉政（実父は建部光重、母は豊氏の姪）は徳川頼宣に仕え、その子孫は紀州徳川家に代々仕えました。

初代藩主・有馬氏倫

有馬頼次から数えて4代目の有馬氏倫は、紀州藩に仕えていた頃から徳川吉宗に重用されていました。1716年（享保元年）に吉宗が将軍に就任すると、氏倫も幕臣となり御側御用取次として仕え、伊勢国三重郡内に1,300石を与えられました。その後、1717年（享保2年）に下野国芳賀郡内で1,000石、1726年（享保11年）に伊勢国多気郡・河曲郡・三重郡内、下野国河内郡内、上総国市原郡内において7,700石を加増され、合計1万石の大名となりました。1727年（享保12年）に正式に領地を認められ、伊勢西条藩が立藩したとされています。

本家にあたる久留米藩が外様大名であったのに対し、伊勢西条藩は譜代大名として扱われました。藩の居所と定められた西条村は神戸城下町に近く、神戸藩との相給地であり、村高の約半分が西条藩の領分でした。

2代から5代

2代藩主の有馬氏久は大番頭を務めました。伊勢の領地を管理する陣屋は南林崎に置かれることになりますが、その設置時期については諸説あります。一説には、元文2年（1737年）または延享2年（1745年）に南林崎陣屋へ移転したと言われています（いずれも2代藩主・氏久の時代）。

氏久の後、藩主は継嗣に恵まれず、幼少や短命の藩主が続きました。3代藩主の有馬氏恒、5代藩主の有馬氏恕は、縁戚関係にあった信濃飯田藩主・堀家からの末期養子によって家督を継承しました。

1781年（天明元年）、有馬氏恕は居所を上総国市原郡五井に移し（五井藩を参照）、これによって有馬家は定府を解かれ、半年ごとの参勤交代を行うようになりました。

なお、『角川日本地名大辞典』では、南林崎に陣屋が移ったのは五井藩となった1781年（天明元年）としています。『四日市市史』では、1802年（享和2年）に西条村が神戸藩領となったことから、この時に南林崎村に陣屋を移転したとされています。

後史

有馬家は上総国の領地を伊勢国と下野国に移され、藩庁を下野国吹上藩に移転して廃藩置県を迎えることになりました。南林崎村など伊勢国内の領地の一部は有馬家の領地として残り、廃藩置県後に吹上県の管轄となりました。

歴代藩主

有馬家 1万石譜代

有馬氏倫（うじのり）従五位下兵庫頭【1726年1月11日藩主就任 - 1735年12月12日死去】〔側衆〕
有馬氏久（うじひさ）従五位下備後守【1737年2月3日藩主就任 - 1759年6月2日隠居】〔大番頭〕
有馬氏恒（うじつね）従五位下式部少輔【1759年6月2日藩主就任 - 1760年2月24日死去】
有馬氏房（うじふさ）不詳【1760年4月19日藩主就任 - 1773年閏3月20日死去】
有馬氏恕（うじしげ）従五位下備後守【1773年5月14日藩主就任 - 1781年11月28日移封】

政治

歴代藩主は江戸に定府していたため、伊勢西条が「居所」と設定されてはいたものの、実際に領地に赴くことはありませんでした。伊勢領7,700石は、1753年（宝暦3年）以降、南林崎村の棚瀬氏が代官を世襲して管掌しました。

脚注

注釈

南林崎陣屋の設置時期については複数の説がある

出典

伊藤清太郎編『神戸平原地方郷土史前編』河曲同窓会、1936年。

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