定遠 (戦艦)

定遠（ていえん）

定遠（Dingyuan）は、清国海軍に属する戦艦であり、定遠級の1番艦です。類似の艦に「鎮遠」が存在します。これらの艦は、清国海軍の重要な主力艦としての役割を果たしました。

艦の建造と艦歴

「定遠」は、1880年代初頭にドイツのヴルカン・シュテッティン造船所で建造されました。艦は、清仏戦争の影響を受けつつも、1885年10月に正式に就役しました。この艦は、同様の造船所で作られたザクセン級装甲艦「ザクセン」を踏襲した設計がなされており、比較的小型の戦艦として位置付けられています。

就役後、定遠は清国北洋水師の旗艦となり、1886年には朝鮮、ロシア、日本を訪問しました。特に日本においてはその威厳と船員の行動から脅威と見なされたことが伝えられています。

日清戦争での戦闘

1894年に日清戦争が勃発し、定遠は重要な海戦である黄海海戦に参加しました。この戦闘中、艦橋が崩壊し、司令官の丁汝昌が負傷するという困難な状況が巻き起こりました。それにもかかわらず、艦は159発の命中弾を受けながらも、最終的には大きな戦力を保持していました。この戦闘では17名が死亡、38名が負傷し、艦の生存能力が試されることとなりました。

戦闘後、定遠は威海衛で防御に従事していましたが、1895年2月5日に水雷艇による奇襲に遭い、深刻な被害を受けました。さらに、陸上からの攻撃と追い打ちを受けつつ、最終的には同年2月10日に自沈しました。艦長の劉歩蟾も自決したと言われています。

歴史的な意義

艦体の一部はその後引き上げられ、福岡県太宰府市には定遠の艦材を利用した「定遠館」が建設されています。この館は、艦内の手すりや歴史的な遺物を展示し、定遠についての学びの場となっています。また、これらの歴史的事実をもとに、地域の文化や歴史に対する理解が深まっています。

近年では、定遠の沈没した艦体が発見されたというニュースが報じられ、2020年には重さ約18トンの装甲鉄板が引き上げられるなど、今もなおその痕跡が探求されています。

エピソードと文化への影響

黄海海戦にまつわるエピソードとして、巡洋艦「松島」に乗り込んでいた水兵が、重傷を負った状態で「まだ沈まずや定遠は」と副長に尋ねたという逸話があり、この場面は軍歌『勇敢なる水兵』に引用されています。また、定遠の戦いをテーマにした軍歌『水雷艇の夜襲』も存在し、艦に関連する文化的な影響が広がっています。

定遠の歴史は、単なる艦船の記録に留まらず、清国の歴史や軍事戦略文化に深く結びついており、今後もその意義は変わらず受け継がれていくことでしょう。

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