宮坂宥勝

宮坂宥勝：真言密教とインド哲学を繋ぐ学者の生涯

宮坂宥勝（1921年-2011年）は、20世紀を代表する日本の仏教学者にしてインド哲学研究者です。真言密教に関する深い造詣と、インド哲学、特に論理学への精通を併せ持つ稀有な学者でした。その学問的貢献は、単なる専門分野にとどまらず、仏教思想の普及と理解に大きく寄与しています。

学問的足跡：インド論理学から密教思想へ

長野県岡谷市に生まれた宮坂は、東北大学法文学部印度科を卒業後、大学院に進学。ダルマキールティやニヤーヤ学派といったインド論理学を初期の研究テーマとしました。東トルキスタン出土の梵本断片や百万頭陀羅尼の解読にも取り組み、その卓越した学力を示しました。

その後、高野山大学助教授、教授を経て、名古屋大学教授として活躍。1957年には「インド仏教の認識論」で文学博士号を取得、1958年には日本印度学仏教学会賞を受賞するなど、早くからその才能を認められました。

宮坂の研究は、インド哲学を基盤としながらも、真言密教、特に空海とその思想への深い探求へと展開していきます。数多くの著書や論文で、密教思想の体系や空海の哲学を分かりやすく解説。特に『弘法大師空海全集』（筑摩書房）の監修は、空海研究における彼の大きな貢献の一つと言えるでしょう。

教団における役割と晩年

学術研究活動と並行して、宮坂は真言宗智山派において重要な役割を担いました。1967年に照光寺住職に就任し、1999年には真言宗智山派管長・総本山智積院化主の重責を担います。その後も種智院大学学術顧問などを務め、仏教界に貢献し続けました。晩年は郷里に戻り、照光寺の長老として穏やかな日々を送ったと伝えられています。

多岐にわたる著作活動

宮坂の著作は、専門的な学術論文から、一般向けの分かりやすい解説書まで、幅広い層を対象としています。真言密教の解説書はもちろんのこと、インド仏教や仏教一般に関する著作、そして空海の思想を解説した著作も多数執筆。さらに、仏教経済論や仏教における人生観といった、現代社会にも通じるテーマを扱った著作も残しています。

これらの著作は、単に仏教の知識を伝えるだけでなく、現代社会における仏教の意義や、仏教思想が人生に与える影響を深く考察している点が特徴です。そのため、専門家のみならず、仏教に関心を持つ多くの人々に広く読まれています。

また、翻訳活動にも積極的に取り組み、インド古典論理学のテキストや空海の著作の翻訳など、多くの仏教関係の書物を日本語に紹介しました。これらの活動は、日本の仏教学研究の発展に大きく貢献していることは間違いありません。

まとめ：仏教学界に燦然と輝く業績

宮坂宥勝は、インド哲学と真言密教という二つの領域を深く究め、その知見を活かして多くの著書や論文を発表しました。真言宗智山派の要職を務めた経験も加え、日本の仏教学界に多大な貢献をしたことは言うまでもありません。その業績は、今後も仏教学研究者や仏教に関心を持つ人々に大きな影響を与え続けるでしょう。彼の研究と人生は、現代の仏教研究者にとって、常に指針となる存在であり続けるに違いありません。

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