問注所

問注所について

問注所（もんちゅうじょ、もんぢゅうしょ）は、日本の歴史において、鎌倉幕府と室町幕府に設置された訴訟事務を担当する機関です。訴訟に関する事務を円滑に進めるために創設され、この機関は多くの訴訟事例を処理する役割を担っていました。問注の意味は、当事者双方への審問やその結果を文書として記録することにあります。そのため、問注所は訴訟を行うための特定の機関なのです。平安時代にはこのような専用の機関は存在しませんでしたが、鎌倉幕府において新たに設置されたことが時代の変化を象徴しています。

沿革

創設

問注所は元暦元年（1184年）10月20日に鎌倉に設立されました。この時期、日本国内は治承・寿永の乱という大規模な内乱の最中にありました。内乱の影響で数多くの訴訟が発生していたため、鎌倉幕府にとって訴訟事務の迅速な処理は政権の安定を図るために必要不可欠でした。初代の問注所執事には三善康信が任命されました。三善氏は代々算道を家業としていた有能な家系で、源頼朝との親しい関係が縁でその職務に就くことができました。

鎌倉期の問注所

創設当初の問注所は、訴訟事案を源頼朝に報告する役割に留まりました。しかし、訴訟事例が増加する中で、『吾妻鏡』には頼朝邸内に問注所が存在し、訴人たちの喧騒が頼朝にとって煩わしいものであったと記されています。最終的に、頼朝は問注所を別の場所へと移転させることを決定しましたが、その命令は彼の死後に実行されました。

問注所の役割も徐々に広がり、建長元年（1250年）には引付衆が設置され、訴訟事務の効率を上げるための仕組みが整えられました。引付衆は御家人の所領関係を扱い、問注所はその他の民事訴訟とその雑務を取り扱うこととなりました。
この時期における問注所の役割は主に東国の一般民事訴訟に限定されていましたが、鎌倉市内の訴訟は政所が管理していたため、多少の権限の制限がありました。

建武の新政期

建武の新政期には、従来の問注所が「窪所」という新たな機関に変わりました。この窪所は、当初は宮中の警備を行う武力機関としての役割も担っていたとされていますが、その具体的な活動内容は明確ではありません。歴史家の中には、この窪所が実質的には問注所の役割を継承していると考える意見もあります。

室町期の問注所

室町時代に入ると、問注所はさらに形を変えました。室町幕府も問注所を設置しましたが、その役割は訴訟処理にとどまらず、文書の管理や簡易訴訟の扱いに制限されました。当時の訴訟事は評定衆の下にある引付が主に担当することとなったため、問注所の機能は相対的に小さくなっていきました。

結論

問注所は、日本の中世における訴訟事務の中核を担いましたが、時代の変化に応じてその役割や重要性は変遷しました。その設立から室町期にかけての歴史は、日本の司法制度の発展を反映する重要な事例と言えるでしょう。

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