寄席囃子

寄席囃子（よせばやし）

寄席囃子は、寄席で行われる演芸に伴う音楽を指し、その役割は非常に重要です。寄席囃子は、興行の習慣に関連する幾つかのカテゴリーに分けることができます。具体的には、興行の習俗にかかわる囃子、出囃子、受け囃子、はめもの、そして色物の囃子に大別され、特に後の二つは地囃子と称されることもあります。これらの音楽は寄席の雰囲気を作り出し、観客に演目をより楽しんでもらうための重要な要素となっています。

寄席囃子の演奏は主に、客席から見て左側の奥に位置する「下座」で行われます。演奏者は「お囃子」や「囃子方」と呼ばれ、演者の様子を御簾越しに見ながら演奏を行います。この寄席囃子自体は時に「下座音楽」とも呼ばれます。使用される楽器には、主に三味線、太鼓、笛、当り鉦があり、これらの楽器によって寄席の雰囲気が作り出されます。楽器の演奏は通常、歌舞伎のスタイルを踏襲しており、太鼓や鉦の役割は落語家の前座が担当します。

寄席囃子の歴史は、江戸時代の上方（現在の大阪や京都）にまで遡ります。寄席が発展する過程で、演芸と共に寄席囃子も重要な役目を果たしてきました。特に、寄席の習俗に関わる囃子は、日々の演芸に欠かせない存在であり、一番太鼓、二番太鼓、追い出しといった特定の音楽が用いられます。「一番太鼓」は開場の合図として「ドンドンドンと来い」と聞こえるように叩かれ、「二番太鼓」は楽屋入りした演者を知らせ、開演前に「お多福来い来い」と賑やかに囃します。また、寄席の終演時には「追い出し」（打出し）が行われ、「出てけ出てけ出てけ」と響き渡ります。このような囃子は、歌舞伎の劇場習慣に似ている部分があります。

次に出囃子についてですが、これは落語家や漫才師が登場する際に演奏される特定の囃子です。演者それぞれに応じた曲があり、その芸風や好みで選ばれます。出囃子は元々大阪で発展しましたが、1910年代には東京の寄席でも採用されるようになりました。当初は落語家が静かな太鼓で高座に上がるスタイルが一般的でしたが、出囃子の導入によって、より華やかな演出が加わるようになりました。現在では、出囃子は多様な楽曲を含むテーマソングのような役割を果たしており、長唄や浄瑠璃といった伝統的な楽曲から、民謡や童謡まで幅広く使用されています。

受け囃子は、落語のサゲ（結末）を受けて演奏されるもので、演者の口演が終わる際の合図となっています。地囃子は、色物、奇術や曲芸などが演じられている間に演奏される囃子です。さらに、上方落語では噺の進行に合わせた囃子や歌が挿入され、物語の情景や登場人物の感情を描き出す役割を果たしています。これを「はめもの」と呼ぶこともあります。

寄席囃子は、寄席文化や日本の伝統芸能において、美しい音の響きと共に大切な役割を担い、観客を魅了し続けています。

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