寅壱

株式会社 寅壱

岡山県倉敷市児島に本拠を構える株式会社寅壱は、日本のワークウェア文化において独自の存在感を放つアパレル関連企業です。1959年の設立以来、主にプロフェッショナルのための作業服の企画、製造、そして販売を手掛けています。その事業は、企業や官公庁、特に建設業や土木業、さらには自治体などの現業部門で働く人々を主な対象としています。また、自社ブランドを冠した店舗チェーンも展開し、ユーザーに直接製品を届ける体制も構築しています。

鳶服におけるパイオニアとそのブランド力

寅壱が手掛ける製品の中でも、特に建設・土木といった現場で活躍する職人、中でも高所作業などを担う鳶職人が着用する「鳶服」は、高い市場シェアを誇ります。その独自のシルエットや機能性、耐久性は、多くのプロフェッショナルから絶大な信頼を得ています。寅壱製の鳶装束は、その品質とデザイン性の高さから、しばしば「作業着のアルマーニ」と称されるほど。単なる作業着の枠を超え、一種のステータスシンボル、ワークウェアにおけるブランド品としての地位を確立しており、特定の職種の人々の間では憧れのアイテムとなっています。

販売網とプロモーション

寅壱は、近畿地方や中国地方を中心とした西日本各地に、直営店「寅壱ビックタイガ」（英名「Vic Tiger」）を展開しています。これにより、地域に根差したきめ細やかな販売・サービスを提供しています。また、全国各地の作業着専門店に対しても製品を供給しており、幅広い流通ネットワークを持っています。

マーケティング活動においても、寅壱は積極的に取り組んでいます。2015年にはタレント、俳優、ファッションモデルとして多方面で活躍するユージ氏をイメージキャラクターに起用し、ブランドイメージの向上を図りました。過去には、1997年に俳優の八名信夫氏率いる悪役商会の面々が出演したCMが近畿地方を中心に放映され、「白抜けた、黒抜けた、寅壱着たらあか抜けた」という印象的なフレーズとともに大きな注目を集めました。GAORAでは、プロレスラーの武藤敬司氏を起用したCMも放送されるなど、ターゲット層に合わせた多様なメディア展開を行っています。さらに、2019年6月14日放送の日本テレビ系列の番組『アナザースカイ』では、モデルの森星氏が寅壱のズボンを紹介するなど、メディア露出も豊富です。

多分野とのコラボレーション

寅壱は、伝統的なワークウェアの枠にとどまらず、異分野との積極的なコラボレーションを通じて、新たなファン層を獲得し、ブランドの可能性を広げています。

例えば、2011年には人気アニメーション作品『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』およびオンラインストア「アニ中ストア」とのユニークなコラボレーションが実現しました。アニメ劇中で特務機関NERVの職員が着用していた作業服をモチーフにした製品を、期間限定・受注生産で発売し、大きな話題となりました。

また、世界的に愛されるキャラクター、ハローキティとのコラボレーションも行っています。ハローキティの可愛らしい柄を取り入れたタオルや小銭入れ、さらにはボクサーパンツといったアイテムを、寅壱公式オンラインショップなどで数量限定で販売し、従来の顧客層とは異なる層からの関心も集めました。

ファッション業界との連携も深めています。2019年10月16日からは、新宿伊勢丹メンズ館内に期間限定でオープンしたポップアップショップ「NO.813」において、国内外で高い評価を得るブランド、WTAPSおよびFORTY PERCENT AGAINST RIGHTS（FPAR）とのトリプルコラボレーションアイテムを限定販売し、ストリートファッションシーンからも注目を集めました。

さらに、現代アートの世界にも進出しています。2020年には、アメリカを代表する現代アーティストであるダニエル・アーシャム氏との異色のコラボレーションが実現。作業着文化とアートが融合した独創的なアイテムが、同年12月24日より「Toraichi Archives」限定で販売開始され、大きな反響を呼びました。

これらの多様なコラボレーション事例は、寅壱が単なる実用的な作業服メーカーではなく、ファッションやアート、エンターテイメントといった様々な文化とクロスオーバーすることで、常に進化し続けるブランドであることを示しています。日本のワークウェアの伝統を礎に、常に新しい価値創造に挑戦する寅壱は、今後もその動向から目が離せない存在と言えるでしょう。

もう一度検索