富士錦猛光

富士錦章（ふじにしき あきら）の生涯と業績

富士錦章は、1937年に山梨県甲府市で生まれ、高砂部屋に所属していた大相撲力士です。彼の本名は一宮章で、身長175cm、体重136kgという体格を持っていました。得意技は突きや押しであり、その力強さから高く評価されていました。特に、彼の穏やかで優しい性格は「平和ちゃん」と愛称で親しまれる要因となりました。

相撲との出会い

富士錦は子供の頃に相撲を始めましたが、最初は嫌々のスタートでした。しかし、成長するにつれてその技術を磨き、特に中学生時代には地元の県大会で優勝、高校1年では国体に出場するなど、次第に実力を証明していきました。

1952年の夏、髙砂一門が巡業に来た際に勧誘を受け、後に4代目髙砂親方から直接指導を受けることになります。これを契機に、彼は1953年3月場所にて初土俵を踏みました。

四股名と技術

四股名には入門当初に目を掛けてくれた横綱東富士の名を採用し『富士錦』と名付けられました。立ち合いでの頭を使った突き押しが持ち味でしたが、四つに組むと脆さも見せたため、それに適応する技術を見つけるのに苦労しました。1959年の1月場所に新入幕を果たしましたが、この場所では5勝10敗の成績で十両に陥落します。しかし、すぐに返り咲き、以降は平幕上位に定着しました。

不屈の精神と優勝

1963年7月場所では母を失ったため心情的に厳しい状況でしたが、その逆境をバネにして9勝6敗という成績を残し、殊勲賞を獲得します。1964年の7月場所では、他の横綱たちが欠場する中、強敵たちを相手に14勝1敗での優勝を遂げました。このときの成績は、平幕の優勝としては戦後15日制で初めての偉業でした。彼の実力は関脇級と評価され、数回の小結での勝ち越しも含め、力士としての地位を確立しました。

現役引退とその後

1968年11月場所で1勝14敗と惨敗を喫し、引退を決意しました。その後、年寄西岩として指導者の道に進み、髙砂部屋を受け継いだのは1988年のことでした。弟子には小結・闘牙や十両・泉州山など個性的な力士を育成し、日本相撲界に大きな影響を与えました。

しかし、2000年に弟子の交通事故がきっかけで師匠としての責任を問われ、降格処分を受けたことが彼の心身に影響をもたらすことになります。健康が悪化した彼は、2002年に年寄名跡を交換し、退職を迎えました。

最期と遺産

その後も髙砂部屋の稽古に顔を出し元気な姿を見せていましたが、2003年12月に慢性腎不全のため66歳でこの世を去りました。彼の墓石には「六代目 高砂浦五郎」と刻まれています。相撲界における彼の存在は、ただ力士としての成績だけでなく、その人柄と指導者としての功績からも後世に語り継がれることでしょう。

秘話と人柄

富士錦章には、息子がプロレス入りした際に激怒し、一時的に勘当したこともありました。また、相撲界では明るい性格で知られ、演歌を好み、カラオケでは特に2曲にこだわって歌ったという逸話もあります。彼の新弟子勧誘の際には、相手を大きく見せるように工夫するなど、ユーモラスな一面もありました。

彼の生涯を振り返ると、相撲界の中での戦いだけでなく、個人としての挑戦や喜びも多くの人々に感銘を与えたことがわかります。

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