富山徳潤

富山徳潤：弁護士、政治家、そして那覇市長

富山徳潤（とみやま とくじゅん）は、1890年（明治23年）2月26日に沖縄県那覇市で生まれました。旧姓は安慶名（あげな）といい、彼は弁護士、政治家として活動し、太平洋戦争中には那覇市長を務めた人物です。

生い立ちと初期のキャリア

富山は、那覇久米町で汝翼（じょよく）の長男として誕生しました。1909年に那覇市立商業学校（現在の沖縄県立那覇商業高等学校）を卒業後、糸満物産会社や鈴木商店に勤務しました。鈴木商店沖縄出張所では、黒糖の買い付けを担当。その後、実業界から法曹界を目指すようになり、那覇区書記や専売局那覇出張所雇などを経て、1915年に普通文官試験に合格し上京。淀橋専売支局に勤務する傍ら、中央大学法科で法律を学び、1918年に卒業しました。

卒業後、大蔵省銀行局に籍を置きましたが、1920年に弁護士試験に合格。天野弘一法律事務所に勤務した後、1923年に帰郷し、那覇市に富山法律事務所を開業。民事訴訟事件を専門とする弁護士として、高い評価を得ました。また、日本弁護士協会名誉理事、弁護士会長、司法保護委員会参与、那覇市社会教育委員、沖縄電気顧問など、数々の要職を歴任しました。

那覇市長としての活動

政治家としてのキャリアも積み重ね、那覇市議会議員、同議長を経て、1942年7月に那覇市長に就任しました。当時の日本は太平洋戦争の最中であり、戦況は日に日に悪化していきました。

1944年10月10日、那覇市は米軍による大規模な空襲（十・十空襲）を受け、市役所も焼失。市役所は市内の焼け残った建物で業務を再開しましたが、翌1945年2月、富山は「疎開地視察」を名目に沖縄を離れ、終戦まで沖縄に戻ることはありませんでした。その間、那覇市役所は助役の兼島景義以下約40名の職員が業務を継続しました。


4月には米軍が沖縄に上陸し、戦況が悪化する中、那覇市役所は機能を失い、沖縄県知事の島田叡は兼島を臨時市長に任命。しかし、兼島もその後死亡し、終戦を迎えることとなりました。

戦後の富山と批判

終戦後、富山は沖縄に戻りましたが、彼の沖縄を離れた行動は、「命を惜しんで市長の職務を放棄し、那覇市民を見捨てて逃げた」として、現在でも強い批判を浴びています。1947年には具志川村（現在のうるま市）に居住していたことが山城善光（後の立法院議員）の日記に記されており、沖縄建設懇談会の発起人にも名を連ねていました。

まとめ

富山徳潤は、弁護士、政治家として沖縄の発展に貢献した一方で、太平洋戦争中の行動が大きな議論を呼んでいます。彼の生涯は、激動の時代を背景に、複雑な評価を受ける人物であったと言えるでしょう。

参考文献

沖縄朝日新聞社編『沖縄県人事録』沖縄朝日新聞社、1937年。
『大衆人事録 第14版 近畿・中国・四国・九州篇』帝国秘密探偵社、1943年。
那覇市企画部市史編集室編『那覇百年のあゆみ:激動の記録・琉球処分から交通方法変更まで』那覇市企画部市史編集室、1982年。
歴代知事編纂会編『日本の歴代市長』第3巻、歴代知事編纂会、1983年。

関連項目

* 泉守紀 - 沖縄県知事。沖縄戦前の転任が、戦場となる沖縄からの逃亡であるとの批判がある。

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