島田叡

島田叡（しまだ あきら）

島田叡は、1901年12月25日に兵庫県で生まれ、1945年6月26日に沖縄で消息を絶った内務官僚であり、沖縄県知事（官選第23代）です。第二次世界大戦末期の沖縄戦において、県民の命を守るために尽力し、「島守」として知られています。彼の座右の銘は「断じて敢行すれば鬼神も之を避く」でした。

生涯

生い立ちと学歴

島田叡は、開業医の長男として生まれました。兵庫県立第二神戸中学校（現・兵庫高等学校）から第三高等学校を経て、1922年に東京帝国大学法学部に入学しました。中学、高校、大学時代を通して野球に熱中し、神戸二中時代には全国中等学校優勝野球大会に出場。東大時代には野球部のスター選手として活躍し、ラグビー部にも所属するスポーツマンでした。その活躍から、野球殿堂博物館に建立された戦没野球人モニュメントに名前が刻まれています。

内務官僚としてのキャリア

1925年に東京帝国大学を卒業後、内務省に入省。山梨県属を皮切りに、佐賀県警察部長、上海駐在領事、千葉県内政部長、愛知県警察部長などを歴任し、1944年8月からは大阪府内政部長を務めました。

沖縄県知事就任

1945年1月10日、沖縄県知事の打診を受け、即座に受諾しました。当時の沖縄は米軍の侵攻が迫る危機的な状況であり、前任者が辞任したため後任の人選が難航していました。周囲が危険を止める中、島田は「誰かが行かなければならないなら、自分が行くしかない」と決意し、日本刀と青酸カリを携えて沖縄へ赴任しました。これは、佐賀県警察部長時代に龍泰寺での勉強会で学んだ『葉隠』と『南洲翁遺訓』の思想に深く影響を受けたためと言われています。

沖縄県知事としての活動

1945年1月31日に沖縄県知事に着任した島田は、駐留軍との関係を改善し、軍との連携を図りました。特に第32軍参謀長長勇とは親交が深く、軍から詳細な軍事情勢の情報を得ていました。長からは「米軍は2月25日頃には沖縄に上陸する」という情報を受け、県民の食料確保を要請されました。島田は直ちに台湾に飛び、3000石の蓬莱米を確保し、県民への食糧供給に尽力しました。また、酒や煙草の特別放出を指示するなど、県民の心を和ませるための努力も怠りませんでした。

島田は、軍の協力を得ながら、県民の疎開や食料の確保を迅速に進めました。空襲が激しくなると、県庁を首里に移転し、地下壕の中で指揮を執りました。軍部との連携を保ちながらも、常に県民を思いやる姿勢は、県民から深い信頼を得ました。しかし、陸軍守備隊の首里撤退に際しては、住民が巻き込まれることを懸念し、反対しました。軍団長会議では「住民を道連れにするのは愚策である」と訴えましたが、軍は作戦を優先し、住民保護は十分に行き届きませんでした。島田は、最後の最後まで住民保護に尽力しました。

最期

1945年6月9日、島田は県職員と警察官に対し、「どうか命を永らえて欲しい」と訓示し、県と警察組織の解散を命じました。6月26日、荒井退造警察部長と共に摩文仁の壕を出た後、消息を絶ちました。遺体は発見されていません。

元兵士の証言によると、島田は壕の中で負傷した状態で発見され、黒砂糖を兵士に与えた後、自決したとされています。

1945年7月9日、島田の殉職に対し、内務大臣安倍源基は、島田に内務大臣賞詞を贈り、「其ノ志、其ノ行動、真ニ官吏ノ亀鑑ト謂フベシ」と称えました。これは、一知事に内務大臣賞詞が贈られた初の事例です。

死後

1951年、県民からの寄付により、島田をはじめとする戦没県職員を祀る「島守の塔」が建立されました。2015年には、那覇市に島田叡氏顕彰碑が建立され、奥武山公園内の多目的グラウンドは『兵庫・沖縄友愛グラウンド』と命名されました。現在でも、島田の遺骨捜索は続けられています。また、沖縄県高等学校野球新人中央大会の優勝校には島田叡杯が授与されています。

人物像

島田は、沖縄戦時、大田実海軍少将と密接に連絡を取り合い、互いに尊敬し合う仲でした。大田は、最後の電文で「県知事より報告せらるべきも」と述べていることからも、島田への信頼の厚さが伺えます。

関連作品

書籍

中野好夫『最後の沖縄県知事』
田村洋三『沖縄の島守 内務官僚かく戦えり』

映像作品

『激動の昭和史 沖縄決戦』
「テレビ未来遺産」“終戦” 特別企画 報道ドラマ 『生きろ ～戦場に残した伝言～』
『生きろ 島田叡－戦中最後の沖縄県知事』
『島守の塔』

脚注

注釈

（注釈については、元のテキストに記載がないため、省略します。）

出典

（出典については、元のテキストに記載がないため、省略します。）

参考文献

田村洋三『沖縄の島守 内務官僚かく戦えり』中央公論新社、2003年。
中野好夫『最後の沖縄県知事』文藝春秋新社、1961年
野里洋『汚名　第二十六代沖縄県知事泉守紀』講談社、1993年12月。
TBSテレビ報道局部「生きろ」取材班『10万人を超す命を救った沖縄県知事・島田叡』ポプラ社、2014年8月
牛島満伝刊行委員会『沖縄軍司令官牛島満伝』春苑堂書店、1972年。
八原博通『沖縄決戦 高級参謀の手記』中公文庫プレミアム、2015年。

外部リンク

合掌の碑 （兵庫県立兵庫高等学校）
嶋田叡墓所 （東京都多磨霊園）

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