富田仁

富田仁

富田仁（とみた ひとし、1933年3月1日 - 2009年3月13日）は、日本の比較文学者であり、日仏文化交流史研究の第一人者として知られています。

経歴

富田仁は東京で生まれ、早稲田大学第一文学部仏文科を1960年に卒業後、1962年に同大学院修士課程を修了しました。その後、早稲田大学で助手として勤務し、1965年に博士課程を修了。1974年には立正女子大学（後の文教大学）助教授に就任し、1978年に教授となりました。1984年からは日本大学法学部教授として教鞭を執りました。

業績

富田仁は、比較文学、特にフランス文学と日本文学の交流史研究に尽力しました。彼の研究は、単に文学作品の比較に留まらず、思想、文化、社会といった幅広い領域に及んでいます。また、日仏文化交流史においては、文学から食事まで、多岐にわたるテーマに取り組み、数多くの著作を発表しました。文献学にも造詣が深く、比較文学研究における文献学的アプローチの重要性を示しました。

1984年には、『フランス語事始』で高橋邦太郎賞を受賞。この作品は、日本のフランス語学習の黎明期における苦労や、フランス文化受容の過程を描いたものです。1998年には、『岩倉使節団のパリ』で日仏文化賞を受賞。この作品は、明治維新期の岩倉使節団がパリを訪問した際の記録を詳細に分析し、日仏文化交流の初期の様相を明らかにしました。

日本比較文学会理事も務め、学会の発展にも貢献しました。

著書

富田仁は、数多くの著書を執筆しました。以下に代表的なものを挙げます。

『作品にみる東西文学の接点』（早稲田大学出版部） 1972
『仏蘭西学のあけぼの 仏学事始とその背景』（カルチャー出版社） 1975
『フランスに魅せられた人びと 中江兆民とその時代』（カルチャー出版社） 1976
『アルフォンス・ドーデと近代文学』（カルチャー出版社） 1977
『日本近代比較文学史』（桜楓社） 1978
『読書探訪ふらんす学の小径』（桜楓社） 1979
『メルメ・カション 幕末フランス怪僧伝』（有隣堂、有隣新書）1980
『日本の産業技術事始め』（ダイヤモンド社） 1980
『フランスの人間学 エスプリの原点』（産業新潮社） 1980
『フランス小説移入考』（東京書籍） 1981
『永遠のジャポン 異郷に眠るフランス人たち』（早稲田大学出版部） 1981
『フランスとの出会い 中江兆民とその時代』（三修社） 1981
『西洋料理がやってきた』（東京書籍、東書選書）1983
『日仏のあけぼの』（高文堂出版社） 1983
『フランス語事始 村上英俊とその時代』（日本放送出版協会、NHKブックス） 1983
『ジュール・ヴェルヌと日本』（花林書房） 1984
『鹿鳴館 擬西洋化の世界』（白水社） 1984
『長崎フランス物語』（白水社） 1987
『舶来事物起原事典』（名著普及会） 1987
『渡来食はじまり紀行』（農山漁村文化協会） 1991
『横浜ふらんす物語』（白水社） 1991
『舶来事物のネーミング』（早稲田大学出版部） 1991
『迷景の異文化 誤解された日本』（教育社） 1991
『現代キャンパスライフ異聞 愛しきかな学生、哀しきかな教師』（白馬出版） 1992
『日本のフランス文化 日仏交流の斜断譜』（白地社） 1993
『岩倉使節団のパリ 山田顕義と木戸孝允その点と線の軌跡』（翰林書房） 1997
* 『パリ点描』（駿河台出版社） 1998

これらの著作は、比較文学研究に多大な影響を与え、今日でも多くの研究者に参照されています。

人物

富田仁は、温厚で誠実な人柄で、多くの学生や研究者から慕われていました。研究に対する情熱は深く、常に新しい視点から日仏文化交流史を考察していました。また、ユーモアのセンスにも恵まれ、多くの人々を魅了しました。

富田仁の死は、日本の比較文学研究にとって大きな損失であり、彼の業績は、今後も長く語り継がれていくことでしょう。

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