富田隆

富田 隆（とみた たかし）

富田隆は、青森県出身の元オウム真理教信徒であり、特異な経歴と経験から注目される人物です。1958年5月21日に生まれ、1976年に日本大学理工学部建築学科に入学するも、家族経営の建築会社が倒産したため、1981年に大学を中退します。その後、様々な職を経て、社交ダンスクラブの講師を務めた後、1986年にオウム神仙の会に入信し、1988年には出家しました。彼は教団内でも武道に秀でているとされ、極真空手の技術を持ち、音楽劇「死と転生」では主演を果たしました。

1990年、富田は真理党の候補として衆議院議員選挙に出馬しましたが、結果は芳しくなく落選。この選挙運動中に振り付けを考案した楽曲「彰晃マーチ」は彼の活動の一環として知られています。しかし、1994年12月17日、彼は交際相手（オウムシスターズのメンバー）とともに教団を脱走しました。脱走の際には、同じく教団から脱会した端本悟が手助けをし、愛知県名古屋市に身をひそめていましたが、逮捕状が出たため1995年に自ら出頭しました。

裁判と松本サリン事件

富田は松本サリン事件の実行犯の一人として起訴され、殺人罪や殺人予備罪が問われました。1996年の東京地裁での裁判では、教祖である麻原彰晃について厳しい言葉を投げかけ、「麻原は聖者ではない」と公然と批判しました。また、麻原がオウムの教えをアニメや雑誌から引用していたことを証言し、これらの情報を知っていた信者たちは馬鹿げていると述べました。

松本サリン事件の前日、富田は指示を受け、作業着を複数調達していましたが、『ガス撒きに行く』と軽い口調で言われたその内容が非常に重大なものであったと後に理解します。

1998年6月12日の第一審では無期懲役の求刑を受けた際、逮捕状が出た後に自ら出頭したことが評価され、懲役17年の判決が下されました。控訴審でも同様に懲役17年が維持され、最高裁への上告が取り下げられたため、2001年12月25日に有罪が確定しました。富田は大分刑務所に収容され、2013年5月に刑期を満了して出所しました。

出所後の活動

富田は出所後、オウム真理教の教団内での経験や自らの過去を振り返りながら、出版活動を通じてその思いを発信しています。彼の著書『オウム真理教元幹部の手記』では、教団内での内部事情や自身の思考過程について詳述されています。

その多彩な経歴と過去の経験から、富田隆は特にオウム真理教に関連する問題に対する貴重な視点を提供する存在として、今後も注目され続けるでしょう。彼の体験は、宗教団体やカルト問題についての理解を深める手助けとなることでしょう。

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