寛慶寺

寛慶寺について

寛慶寺は、長野県長野市東之門町に位置する浄土宗の寺院で、正式には寿福山無量院寛慶寺と称します。善光寺の東門に隣接しており、その歴史と文化において重要な役割を果たしてきました。本尊は阿弥陀如来で、知恩院を総本山とする浄土宗鎮西派に属しています。

歴史

寛慶寺の歴史は古く、中世に戸隠顕光寺（現在の戸隠神社）や善光寺の別当を務めた栗田氏によって創立されました。当初は「栗田寺」という名称でしたが、後に栗田寛慶の名を取り「寛慶寺」と改められました。戦国時代には、善光寺において重要な地位を占めていたことが知られています。近世には、西方寺・康楽寺と共に「三寺」と称され、地域で重んじられていました。

寛慶寺は、過去に何度か火災に見舞われています。弘化4年（1847年）の善光寺地震では焼失しましたが、明治16年（1883年）に再建されました。

文化財

寛慶寺には、長野市指定の有形文化財が二つあります。

木造金剛力士像: 仁王門に安置されている阿形・吽形の金剛力士像です。檜材の一木造りで、高さは約280cm。明応7年（1498年）の銘記があり、18世紀にも修理された記録が残っています。もとは戸隠神社の仁王堂にあったものが、明治初期の廃仏毀釈によって移設されたと伝えられています。
木造百万塔: 法隆寺から譲り受けた百万塔です。1908年、法隆寺は所蔵する百万塔の一部を譲与し、寛慶寺を含むいくつかの寺院に分与されました。

霧吹きの獅子

寛慶寺の表門は、弘化4年（1847年）の善光寺大地震で焼失したため、善光寺大勧進から移築されたものです。この門は地震では焼け残りましたが、明治24年（1891年）の大火で再び焼失の危機に瀕しました。しかし、その際、門の彫刻である獅子が霧を吹いて火を消し止めたという伝説が残っており、「霧吹きの獅子」として知られています。

徳本上人と寛慶寺

江戸時代後期に活躍した念仏行者・徳本上人が、文化13年（1816年）に寛慶寺に13泊滞在しました。徳本上人は全国を巡錫しており、寛慶寺滞在中は善光寺に参籠している意識だったと考えられています。滞在中、室内には善光寺如来が出現したという逸話も残されています。

徳本上人は、「南無阿弥陀仏」と印刷した名号札を人々に配りました。寛慶寺では2万枚以上が配布され、その中の一人には俳人の小林一茶も含まれています。一茶は、この時に「居直るも銭の上也なむ桜」という句を詠んでいます。

2019年には、寛慶寺で「第３回念仏行者徳本上人研究会」が開催されるなど、徳本上人と寛慶寺の縁は現代にも受け継がれています。

まとめ

寛慶寺は、その長い歴史の中で、宗教的な中心地として、また地域の人々の心の拠り所として重要な役割を果たしてきました。金剛力士像や霧吹きの獅子など、数々の文化財や伝説が残るこの寺は、善光寺を訪れる際にはぜひ立ち寄りたい場所の一つです。徳本上人との深い関わりも、この寺を語る上で欠かせない要素です。

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