審理 (映画)

映画『審理』について

映画『審理』は、2009年から始まった裁判員制度をテーマにした、最高裁判所企画・制作の広報映画です。2008年に制作されました。この映画は、一般市民が裁判員候補者名簿に登録され、通知を受け取るところから、殺人事件の裁判員裁判で評議し、裁判が終了するまでの過程を、ドラマ形式で描いたフィクションです。

概要

この映画は、裁判員となった際の戸惑いや、裁判員裁判での審理の過程、争点に対する裁判員同士の議論、そして裁判員が抱く心情などを、裁判員側の視点から具体的に描いています。裁判員制度に対する一般市民の理解を深めることを目的として制作されました。

この作品は、2006年の『評議』、2007年の『裁判員〜選ばれ、そして見えてきたもの〜』に続く、最高裁判所企画・制作による裁判員制度広報用映画の第3弾です。

しかし、2009年8月7日、出演者の酒井法子が覚醒剤取締法違反（所持）の疑いで逮捕された直後、最高裁は「様々な事情を考慮した」として、この映画の上映及び使用を自粛することを発表しました。

ストーリー

主婦の奈緒子は、ある日突然、裁判員候補者の名簿に載ったことを知ります。戸惑いながらも、家族と平穏な生活を送っていました。しかし、東京都内の駅構内で発生した刺殺事件の裁判に、裁判員として参加することになります。目の前で繰り広げられる審理の中で、奈緒子は次第に事件の真相に迫っていきます。

この映画で題材とされている裁判の主要な争点は、殺人を犯した被告人側に正当防衛が適用できるかどうかという点です。なお、罪名は「殺人及び銃砲刀剣類所持等取締法違反」です。

主な登場人物とキャスト

裁判員
木村奈緒子（主婦）：酒井法子
篠山カツ代（農家）：岡本麗
広瀬智則（自営業）：相島一之
岩崎絵里花（看護師）：小林涼子
遠藤和也（会社員）：山中聡
島田康弘（翻訳家）：伊丹幸雄

裁判官
裁判長・鈴木光男：御友公喜
裁判官・神崎冴子：英由佳
裁判官・上原今日子：星野真里

被告人・弁護人
被告人・五十嵐義男：田中圭
弁護人・矢吹護：斉木しげる

被害者・検察官
被害者・山川尚忠（被告人により殺害）：達淳一
被害者参加人・山川静江（山川尚忠の母）：久保田民絵
検察官・田中憲司：宮川一朗太

証人
佐伯一郎（事件の目撃者）：藤巻裕己
五十嵐綾（五十嵐義男の妻）：乙黒えり

その他
木村正和（木村奈緒子の夫）：山口馬木也
木村大祐（木村奈緒子の子）：佐藤和也
篠山春信（篠山カツ代の家族）：園部貴一
篠山夏江（篠山カツ代の義娘）：浜菜みやこ
川田貴裕（遠藤和也の同僚）：高崎秀之

スタッフ

統括プロデューサー：開発栄三（コード）
プロデューサー：澤野裕司（ジェイアール東海エージェンシー）、臼井正明（シネムーブ）
監督：原田昌樹
脚本：加藤竜士
撮影：坂江正明
照明：守利賢一
録音：久保重朗
美術：湯澤幸夫
スクリプター：高橋久美子
編集：川瀬功
音楽：富貴晴美
音楽制作：インスパイアホールディングス（藤田雅章）
制作：ジェイアール東海エージェンシー、コード
企画・制作：最高裁判所
協力：法務省、日本弁護士連合会

撮影と試写会

2007年12月にクランクインし、本格的な撮影は2008年1月5日に開始されました。2008年3月25日には、最高裁判所講堂で試写会が行われ、主演の酒井法子をはじめとする出演者と、抽選で選ばれた一般参加者約300人が招待されました。

メディア展開

最高裁判所は2008年4月から、DVD5万枚とビデオ4,000本を全国の学校や図書館、各地の裁判所などに配布し、一般市民に貸し出しました。また、2008年5月からは最高裁判所のホームページで動画配信も行われました。

2009年3月にはCS放送の日本[[映画専門チャンネル]]で放送されましたが、2009年8月以降、貸し出しと配信は中止されました。しかし、2015年3月現在では、図書館での視聴・貸出が再開されています。

エピソード

この作品は、原田昌樹監督の遺作となりました。撮影当時、監督は癌の再発により余命宣告を受けていましたが、主治医と相談の上で撮影に臨みました。

裁判所の階段のシーンは、実際の最高裁判所で初めて行われたロケでした。

裁判員の一人を演じた相島一之は、過去に映画『12人の優しい日本人』でも陪審員を演じています。この映画では、離婚した妻と被告人を同一視し、偏見から有罪を主張する陪審員を演じましたが、本作では被告人に偏見を持たない裁判員を演じました。