寺町廃寺跡

寺町廃寺跡の概要

寺町廃寺跡（てらまちはいじあと）は、広島県三次市向江田町に所在する古代寺院の遺跡であり、元々は「三谷寺（三谿寺）」として知られていました。1984年に国の史跡に指定されており、歴史的価値が高い場所です。

この寺院跡は、広島県北部の三次盆地の丘陵の南斜面に位置しています。ここでは1979年から1982年、さらに2018年以降にかけて発掘調査が行われ、その結果、法起寺式の伽藍配置が確認されました。この配置は、金堂を西、塔を東に、講堂を北という形で整然と配置されています。寺院の創建は白鳳時代にさかのぼると考えられ、平安時代初頭、9世紀ごろに廃絶したと推定されています。

発見された遺構

寺町廃寺跡では、金堂、塔、講堂、回廊の主要な構造物が発見されています。

金堂

金堂は、寺域の西側に位置し、本尊を祀るための建物です。基壇は塼積基壇で、小型のレンガ状の焼物を用いて築造されています。この基壇は東西に約15.7メートル、南北に約13.4メートルの大きさを持ち、高さは約0.8メートルです。

塔

寺域の東側には釈迦の遺骨を納めるための塔があり、金堂と同じく塼積基壇で造られています。基壇の一辺は約11メートルで、北面には階段も確認されています。心礎は遺存しており、この塔は歴史的にも重要な役割を持っていたと考えられています。

講堂

講堂は経典の講義や教説が行われる場所で、基壇は金堂と似た形状ですが、サイズは東西に約25.1メートル、南北は約14.7メートルです。基壇には3つの階段があるほか、上には入母屋造の建物が構想されていました。

回廊

回廊は金堂と塔を囲み、講堂の左右に取り付いています。幅は約4.0から4.6メートルで、犬走りと呼ばれる歩行空間が外周に設けられていました。

出土品と文化的意義

寺町廃寺からは、さまざまな出土品が発見されています。瓦類では軒丸瓦や丸瓦、鴟尾が含まれており、特に軒丸瓦は特徴的な三角状突起を持つ水切瓦であるため、地域の特徴を示しています。また、土器の中には須恵器や土師器、中国の唐代の三彩陶器片が見つかっています。このことから、広島県北部の古代文化の重要な一場面を築いていたことが伺えます。

寺町廃寺は、平安時代初頭の文献『日本霊異記』に記載されている「三谷寺」に関連が深く、また、百済からの僧の招請があったことも示唆されています。これにより、朝鮮半島との関係が強調され、古代における文化交流の一端を理解するための重要な資料とされています。さらに、寺町廃寺跡周辺には上山手廃寺跡も存在し、地域における仏教文化の拡がりを示す証拠となっています。

まとめ

寺町廃寺跡は、その歴史的背景や出土品から地域の古代寺院文化の中心的な存在であり、発掘調査を通じて明らかになった多くの情報が、この地域の歴史の理解を深める手助けとなっています。今後もさらなる研究が期待される重要な文化遺産であり、歴史研究や観光、教育の場としても価値が高い場所です。

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